初回カウンセリングとは WEB予約 086-253-7755
blog
医療コラム
医療コラム
2024.10.20

【歯を抜かない矯正が招くトラブル:リスクを避ける正しい選択とは】


こんにちは、岡山矯正歯科の院長 田川 淳平です。

矯正治療を検討する患者さんにとって、治療の一環として「歯を抜く」という選択は多くの場合、心理的な負担になります。

特に、歯を抜かないで矯正ができるという提案は、非常に魅力的に感じられることが多いです。

歯を抜かずに治療を行うことができれば、不安を避けることができ、デメリットが無いようにも思えるでしょう。

しかしながら、「歯を抜かない矯正治療」には、メリットだけでなく多くのリスクやデメリットが存在することを知っておくことが重要です。

この記事では、歯を抜かない矯正治療のリスクとデメリットについて詳しく解説し、そのリスクを避けるための最適な選択についてお話していきます。

出っ歯や歯並びの改善を希望する患者さんが、安心して治療を選べるようサポートする内容になっています。

  1. 歯を抜かない矯正治療の増加とその背景
  2. 歯を抜かない矯正治療のメリット
  3. どのような場合に歯を抜かないといけないか?
  4. 歯を抜かない矯正治療のデメリットとリスク
  5. 正しい選択をするために:信頼できる矯正医の診断が重要
  6. まとめ
歯を抜かない矯正のリスクには、歯肉退縮や出っ歯があります。
歯を抜かない矯正のリスクには、歯肉退縮や出っ歯があります。

1.歯を抜かない矯正治療の背景

近年、矯正治療のニーズが高まっています。

これは歯並びを綺麗にしたいと思う方が増えてきていることが背景にあると考えられます。

日本人のようにアゴが小さいと、全ての歯を残したまま歯並びを綺麗にすることは難しく、歯を抜く抜歯が必要になることが多いです。

ただ、患者さんから見ると、抜歯への抵抗感、特に健康な歯を抜くことに対する心理的な負担が大きく、患者さんやその親御さんが「なるべく歯を抜かないで治療したい」と考えることが多いのも事実です。

治療技術の進歩に伴い、従来は抜歯が必要とされていたケースでも、歯を抜かずに矯正が可能となる場合もわずかですがあります。

しかしながら、歯を抜かない矯正治療は常に最善の選択肢とは限りません。

個々の口の状況に応じて、歯を抜かない選択がトラブルを引き起こすリスクもあるのです。

そのため、歯を抜くか抜かないかの判断は、信頼できる矯正歯科医との十分な相談の上で慎重に行う必要があります。


そもそも、矯正治療は患者さん毎に詳しい検査、診断をして、どのような治療法がその患者さんにとって最適かを導き出すものです。

患者さんによっては、抜歯をすることが最善な方もおられますし、歯を抜かないのが最善な方もおられます。

1つ目は、歯医者さんにとっての矯正治療の難易度は、歯を抜く治療の方が圧倒的に難しいからです。

矯正治療をしっかりとはできない、それでも矯正治療は自費だからという理由で安易に矯正治療に手を出す歯医者さんが、簡単な治療だけやってみようという感覚で手を出すのが「歯を抜かない矯正治療」です。

2つ目は、患者さんの中には歯を抜くのを嫌がる方がいくらかはおられるために、「歯を抜かない矯正治療」と謳った方が患者さんを呼びこめると、その歯医者さんが思っているからです。

矯正治療は、歯並びを綺麗にするため美容的な側面も持っていますが、あくまでも治療であり、患者さんの健康を度外視してはいけませんし、歯医者さんの利益ばかりを追い求めた商売的な要素ばかりではいけないと、私は思います。

つまり、この後に詳しくお話しますが、歯医者さんのホームページで「歯を抜かない矯正治療」と見かけたら、そこの歯医者さんは要注意、というわけです。

2.歯を抜かない矯正治療のメリット

まず、歯を抜かない矯正治療のメリットについて見ていきましょう。

歯を抜かない矯正治療の全てが悪いというわけでは無く、検査・診断によっては歯を抜かない矯正治療が最適な患者さんももちろんおられます。

その場合には、歯を抜かない矯正治療ならではのメリットを享受することができます。

これには以下のような点が挙げられます。

2-1.治療に対する不安の軽減

抜歯に対する不安や恐怖は、多くの患者が抱える問題です。

特に小児や若年層の患者は、歯を抜くこと自体への恐怖や、痛みや麻酔に対する抵抗感が強く、抜歯を避けたいと考えることが多いです。

歯を抜かない選択肢を提供することで、患者は精神的な負担を軽減し、治療に前向きに取り組むことができるでしょう。

2-2.短い治療期間

歯を抜かない矯正治療は、一般的に治療期間が短いです。

それは、歯を動かす移動距離が短いためです。

治療期間が短いため、患者さんの治療による負担も軽減することができます。

3.どのような場合に歯を抜かないといけないか?

しかしながら、すべての患者さんが歯を抜かずに矯正治療を行えるわけではありません。

矯正治療の方法は、患者さん一人ひとりの口腔内の状態や治療目的によって異なるため、個々のケースに応じて慎重に判断する必要があります。

次に、どのようなケースで歯を抜かない治療が不適切とされるのか、具体的な状況を紹介します。

3-1.重度の出っ歯

出っ歯が顕著な場合、抜歯を行うことで前歯を後退させるスペースを確保することが求められます。

この場合に、歯を抜かずに矯正治療を行うと、出っ歯が改善されないだけで無く、むしろ前歯はもっと出るため、出っ歯は悪化し、口元の突出感もさらに酷くなってしまいます。

特に、見た目にこだわりたい患者さんや、審美的な仕上がりを重要視する場合、抜歯を行った方がより理想的な結果が得られることが多いです。

3-2.重度のスペース不足

顎の骨格が小さい場合、歯が並ぶための十分なスペースが無く、歯の重なりが大きかったり、八重歯になっていることがあります。

無理に歯を動かそうとすると、歯がどんどん外に出ていくため、出っ歯になったり、歯が骨から飛び出るために歯肉退縮(歯ぐきが下がる)が起きてしまいます。

このようなケースでは、歯を抜かない治療では理想的な歯並びを作り出すのが難しく、抜歯によるスペース確保が必要となります。

4.歯を抜かない矯正治療のデメリットとリスク

歯を抜かない矯正治療にはリスクやデメリットが存在します。

これらを十分に理解した上で治療を選択することが、長期的な口腔の健康を守るためには欠かせません。

4-1.前歯と口元が治療前よりも突出する(出っ歯の悪化)

出っ歯の矯正を希望する患者さんにとって、歯を抜かない治療では理想的な結果は得られません。

抜歯を行わないことで、前歯を後方に移動させるスペースが無いために、結果として口元の突出感は治療前よりも悪化し、より出っ歯になります。

これは見た目に大きな影響を与えるため、審美性を重視する患者さんにとっては重要な問題です。

出っ歯のイメージ
出っ歯のイメージ

4-2.歯列弓の過度な拡大

歯を抜かない治療では、スペースを確保するために歯列弓(歯が並んでいるアーチ状の部分)を拡大する方法が取られることが一般的です。

しかし、過度な拡大は、歯がアゴの骨から飛び出る方向に動くことになり、長期的な口腔健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

特に、歯肉退縮や歯槽骨吸収が起き、歯の寿命を縮めるリスクが増加する恐れがあるため、慎重に治療を行うかどうかを考える必要があります。

歯肉退縮を大きく起こした歯のイメージ
歯肉退縮を大きく起こした歯のイメージ

4-3.過度な負担がかかる歯の移動

歯を抜かずに矯正を行う場合、特定の歯に過度な力がかかることがあります。

これによって歯が健康な状態を保てなくなり、最悪の場合、歯の損傷や神経のダメージを引き起こすリスクが生じます。

4-4.後戻りのリスク

歯を抜かない矯正治療では、歯が元に戻る「後戻り」のリスクが高くなることがあります。

これは、本来なら歯を抜かないといけない(抜歯して矯正することがベスト)にも関わらず、歯を抜かないで無理のある位置に歯を動かしてしまっていることが原因です。

後戻りが発生すると、再度矯正治療が必要になる場合もあるため、長期的なケアが欠かせません。

4-5.嚙み合わせの不具合

歯を抜かないで矯正治療を行う場合、上下の歯の噛み合わせに不具合が生じることがあります。

これは、スペース不足を無理に補おうとすることで、歯が適切な位置に動かず、噛み合わせに影響を与える結果となるからです。

噛み合わせが不適切だと、顎関節や咀嚼機能に影響が出る可能性があり、長期的な健康リスクが高まります。

5.正しい選択をするために:信頼できる矯正医の診断が重要

矯正治療を進める際に重要なのは、患者さん個々の口腔状態に基づいた診断を行い、最適な治療法を選択することです。

歯を抜くか抜かないかという選択は、歯科医師の都合(歯を抜く矯正治療ができない)や、患者さんの希望だけでなく、長期的な口腔の健康や咬み合わせ、審美的な要素を考慮して決定する必要があります。

まずは、信頼できる矯正医としっかりと相談することが大切です。

歯を抜かない治療が可能である場合でも、無理なく歯並びが整うかどうか、または将来的なリスクについても十分に理解する必要があります。

矯正治療は長期間にわたるものであり、その影響は患者さんの一生に関わるため、慎重な判断が求められます。

信頼できる矯正医の見つけ方を知りたい方は、どうぞコチラをお読みください。

6.まとめ

歯を抜かない矯正治療と聞くと、聞こえは良いですが、全ての患者さんにできるわけでは無く、無理に歯を抜かずに矯正治療を行うとデメリットやリスクがあります。

出っ歯、歯肉退縮、後戻りのリスク、嚙み合わせの不具合などのデメリットやリスクが多く存在します。

特に元々が出っ歯や重度のガタガタの歯並びを持つ患者さんには、抜歯を伴う治療がより効果的である場合が多いです。

矯正治療を選択する際は、信頼できる矯正医との十分な相談を行い、自分に最も適した治療法を選ぶことが重要です。

最終的には、短期的な痛みや不安を避けるためだけでなく、長期的な結果を見据えて治療法を選ぶことが、患者さんにとって最良の選択となるでしょう。

当院では、一人ひとりの患者さんに最適な矯正治療を提案し、治療中も患者さんが相談しやすい快適な環境を作るよう心掛けています。

矯正治療に興味のある方はお気軽にご相談ください。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

この記事を読んだ方が、より良い矯正治療を受けられることを願っています。

今後もどうぞご贔屓ご鞭撻のほどを。

BACK