こんにちは、岡山矯正歯科の院長 田川 淳平です。
矯正治療は、美しい歯並びと健康的な口腔環境を手に入れるための重要なステップです。
しかし、矯正治療にはさまざまな種類の装置があり、どの装置が自分に合っているのか、どのように使うべきなのかを知ることは、初めて矯正を検討する方にとって難しい課題かもしれません。
特に「拡大装置」は、子供の成長期に効果的な矯正装置のひとつであり、歯列を広げることで正しい歯並びを促進します。
しかし、その仕組みや役割、使用時の注意点、さらには費用や治療期間について十分に理解している方は少ないのが現状です。
また、「しゃべりにくい」「舌が痛い」「装置の清潔さを保つのが大変」といったお悩みを抱えることもあるため、事前に適切な情報を得ることが重要です。
この記事では、拡大装置の基本的な役割や仕組みをはじめ、装置の種類やその特徴、費用、治療期間、日常生活での影響、そしてよくあるお悩みへの対策まで、包括的に解説します。
特にお子様の矯正治療を検討している親御さんにとって、この記事は判断材料となるでしょう。
正しい情報をもとに、自分やお子様に最適な治療を選び、安心して矯正治療をスタートできるようお手伝いします。
- 拡大装置とは?その役割と仕組み
- 拡大装置の種類と特徴
- 拡大装置の費用と治療期間
- 拡大装置の使用中に感じる不便さとその対策
- 拡大装置と日常生活:食事と洗浄方法
- 子供の矯正治療で拡大装置を使うメリット
- まとめ

1. 拡大装置とは?その役割と仕組み
1-1. 拡大装置の基本的な役割
矯正治療において拡大装置は、歯列や顎の骨を広げるために用いられる装置です。
特に顎の発育が終わる前の子供に使用されることが多く、自然な骨の成長を利用して拡大することによって、歯が並ぶためのスペースを効率良く獲得することもできます。
歯列が狭いと歯が重なり合ったり、正常なかみ合わせが妨げられることがありますが、拡大装置はこうした問題を解決するための重要なツールです。
1-2. 拡大装置の具体的な仕組み
装置にはネジやバネが組み込まれており、これらを定期的に調整することで、少しずつ顎の幅を広げます。
調整時には軽い圧力がかかり、数日痛みを伴うことがありますが、これは自然なプロセスです。
痛みに関しては、数日で無くなることが多いです。
拡大装置が必要なケース
- 歯列が狭い場合:永久歯が生えるスペースを確保するためや、ガタガタをほどくためのスペースを獲得するために使用されます。
- 奥歯の嚙み合わせが反対咬合の場合:狭い方の顎の幅を広げてバランスを整えることが目的です。
拡大装置は、成長期の子供に特に効果的です。
なぜなら、この時期の骨は柔軟で矯正の影響を受けやすいためです。
将来的な抜歯の可能性を低くすることとができる場合もあります。
2. 拡大装置の種類と特徴
拡大装置にはさまざまな種類があり、それぞれの特徴や適用範囲があります。
ここでは代表的な3つの種類を詳しく見ていきます。
2-1.固定式拡大装置
固定式拡大装置は、歯に直接引っ付けるタイプで、患者さん自身では取り外せません。
この装置は治療効果が安定しており、特に成長期の子供に適しています。
急速拡大装置やクワドヘリックス、バイヘリックスなどがこのグループに含まれます。
- 特徴:装置がしっかり固定されているため、患者さんのモチベーションに左右されることなく使用できます。
- メリット:装置が固定されているため、患者さんのモチベーションに左右されることなく治療がしっかりと進みます。
- デメリット:装置が歯に密着しているため、食事や歯磨きの際に清潔を保つのが難しい場合があります。歯ブラシを使った念入りなケアが必要です。装置が擦れるなどのトラブルがあった場合に、歯科医院に来院しないと対処することができない。
2-2.取り外し可能な拡大装置
取り外し可能な拡大装置は、患者さんが自由に装着・取り外しできるタイプです。
装置を外して食事をしたり、洗浄したりすることができるため、日常生活に与える影響が比較的少ないのが特徴です。
拡大床などがこのグループに含まれます。
- 特徴:食事や歯磨きの際に取り外せるため、装置を外して洗浄することで清潔を保ちやすいです。
- メリット:食事の制限が少なく、装置が原因で舌が痛いや頬が痛いと感じることが減ります。
- デメリット:患者さん自身の使用時間が治療効果に直結するため、装着を怠ると、治療期間が伸びる、効果が得られないなどの可能性があります。
拡大装置を選ぶ際には、患者さんの年齢や歯列の状態、生活スタイルを考慮することが重要です。
矯正歯科医師と十分に相談し、自分に最適な装置を選ぶことが、スムーズな治療への第一歩となります。


3. 拡大装置の費用と治療期間
3-1.拡大装置の費用
矯正治療全般における費用は、歯科医院毎に異なり、使用する装置や治療の複雑さ、通院回数などによって異なります。
拡大装置の費用についても例外ではなく、いくつかの要因が最終的な金額に影響を与えます。
また、一般的には拡大装置単独の費用となることはまず無く、子供の矯正治療であれば矯正治療のⅠ期治療の費用、中学生以上・大人の矯正治療であれば矯正治療のⅡ期治療の費用がかかります。
- 一般的な子供の矯正治療の費用の目安
子供の矯正治療の費用は一般的に40~70万円程度であることが多いです。総額が40万円〜70万円で設定されている場合、その中に拡大装置の費用も含まれていることが多いです。 - 一般的な大人の矯正治療の費用の目安
大人の矯正治療の費用は一般的に70~150万円程度です。総額が70~150万円で設定されている場合、その中に拡大装置の費用も含まれていることが多いです。
3-2.費用を抑えるための方法
矯正治療は大きな投資ですが、いくつかの方法で費用を抑えることができます。以下はその例です:
- 医療費控除を活用する:矯正治療は医療費控除の対象となるため、確定申告を行うことで所得税の一部を取り戻すことが可能です。
- 分割払いを利用する:多くの歯科医院では、分割払いに対応しているため、家計への負担を軽減できます。
- 複数のクリニックで相談する:初診相談を複数のクリニックで受けることで、費用や治療方針を比較することができます。
- 矯正専門のクリニックで治療を受ける:一般の歯科医院で矯正治療を受けてしまい失敗してから、矯正専門のクリニックで治療を受けると、矯正治療の費用は二重にかかってしまいます。そのため、最初から矯正専門の歯科医院で矯正治療を受けることをお勧めします。
3-3.治療期間
拡大装置の治療期間は、患者さんの状態や治療の進行具合によって異なりますが、一般的には以下のような期間が目安となります。
- 標準的な治療期間
通常、拡大装置の使用期間は6か月〜12か月程度です。これは、顎の幅を広げるために必要な時間であり、成長期の子供ではこの範囲内で治療が完了することが多いです。 - 短縮できるケース
急速拡大装置を使用する場合、治療期間が1〜3か月程度に短縮されることがあります。ただし、この場合でも装置を外した後に保定期間が必要です。 - 長引く場合の理由
患者さんが装置を正しく使用しなかったりした場合、治療が長引くことがあります。また、1つの拡大装置だけでは改善が不十分な場合、追加の拡大装置を使用する必要が出てくることもあります。
3-4.定期的な通院の重要性
拡大装置の治療は、定期的な通院と調整が重要です。
これにより、治療の進行状況を確認し、必要な調整を行うことで、計画通りの期間で治療を完了させることができます。
一般的には、1〜2か月ごとの通院が推奨されます。
4. 拡大装置の使用中に感じる不便さとその対策
4-1.しゃべりにくいと感じる理由
拡大装置を装着すると、舌の動きが制限されるため、しゃべりにくい、言葉がうまく発音できないと感じることがあります。
特に「サ行」や「タ行」の発音が難しくなることが多いです。
- 装置が原因で起こる変化
舌が装置に触れることで、通常の動きが制限され、発音が不明瞭になることがあります。特に装置を装着した直後は、慣れるまでの数日間、話すことがストレスに感じるかもしれません。 - 適応にかかる時間
多くの場合、装置に慣れるまでの期間は1〜2週間程度です。この間に舌や口の筋肉が装置に適応し、発音も徐々に改善されます。
4-2.しゃべりにくい時の対策
- 発音練習を行う:特定の発音を繰り返し練習することで、舌の動きを矯正装置に慣らすことができます。
- 会話を増やす:日常的に話す機会を増やすことで、自然と適応が進みます。
- 矯正歯科医師に相談する:しゃべりにくさが長引く場合や、発音が極端に困難な場合は、装置の調整が必要なことがあります。
4-3.舌が痛いときのケア
装置が舌に当たり、舌が痛い、不快感を感じることがあります。
特に固定式装置では、金属部分が舌や口内の粘膜を刺激することが原因となります。
- よくある原因
- 装置の金属部分が尖っている。
- 装置が正しく装着されていない。
- 過剰な舌の動きや無意識に装置に触れる動作。
4-4.舌が痛い時の対策
- 矯正用ワックスの使用
金属部分に矯正用ワックスを塗布することで、舌との接触を和らげることができます。これにより、痛みを軽減しながら治療を進められます。 - 洗浄とケアの徹底
装置に汚れが溜まると、口内の不快感が増すことがあります。清潔を保つことで、舌や粘膜の負担を減らすことができます。 - 痛みが続く場合は矯正歯科医師に相談
痛みが長引く場合や、装置が原因で傷ができている場合は、速やかに医師に相談してください。装置の再調整が必要な場合があります。
5. 拡大装置と日常生活:食事と洗浄方法
拡大装置を装着している間、日常生活では特に「食事」と「装置の洗浄」に気をつける必要があります。
装置を長く清潔に使い、効果的な治療を進めるためには、正しい方法を理解しておくことが重要です。
5-1.食事の注意点
固定式の拡大装置を使用中は、装置に影響を与える食べ物を避ける必要があります。
装置が壊れたり、歯や装置周りに汚れが溜まったりすると、治療効果が低下する恐れがあります。
- 避けるべき食べ物
- 硬いもの:アーモンドやキャンディーなどの硬い食品は、装置を傷つける可能性があります。
- 粘着性のあるもの:ガムやキャラメルのような粘り気のある食品は、装置に絡まりやすく、取り除くのが困難です。
- おすすめの食事方法
- 食べ物を小さく切り分けてから食べることで、装置への負担を軽減できます。
- 柔らかい食品(スープ、蒸し野菜、豆腐など)を中心にすることで、装置にやさしい食生活を送れます。
- 食後は必ず歯磨きや洗浄を行い、食べ物のカスが装置に残らないようにしましょう。
5-2.洗浄のポイント
装置を清潔に保つことは、快適な治療生活を送るために非常に重要です。
装置に汚れが溜まると、口臭や虫歯のリスクが高まるだけでなく、装置の劣化を招く可能性があります。
- 取り外し可能な装置の洗浄方法
- 専用の洗浄剤を使って装置を洗浄します。これにより、細菌や臭いの発生を防げます。
- 柔らかいブラシを使って、装置の細かい部分をやさしく磨きます。
- 装置を洗浄後、自然乾燥させることで清潔を保ちます。
- 固定式装置のケア方法
- 歯磨きの際、歯ブラシを活用して、装置周りの汚れを取り除きます。
- 定期的に矯正歯科医院で装置の清掃や調整を受けることが推奨されます。
- マウスウォッシュを使用して、口全体の清潔を保つのも効果的です。

6. 子供の矯正治療で拡大装置を使うメリット
子供の矯正治療において拡大装置を使用することには、多くのメリットがあります。
成長期の骨の柔軟性を最大限に活用し、より自然な歯列形成を目指すことができます。
6-1.骨の成長を利用できる
子供の顎骨は成長段階にあり、柔軟性があります。
このため、急速拡大装置のみの話ですが、急速拡大装置を使用することで、顎の骨の幅を広げることが可能です。
成長期に治療を行うことで、後々の矯正治療が簡易化されることが多いです。
- 自然なスペースの確保
永久歯が生えるためのスペースを拡大装置で確保することにより、抜歯を避けられるケースもあります。 - 治療期間の短縮
成長期の骨は治療への反応が早いため、大人に比べて治療期間が短くなる傾向があります。
6-2.将来的な矯正の負担を軽減
早期に拡大装置を使って歯列を整えることで、将来的な矯正治療の負担を減らすことができます。
- 大掛かりな治療を回避
子供のうちに顎を広げておくことで、大人になってから複雑な治療が必要になるリスクを減らせる場合もあります。 - 費用面でのメリット
早期治療を行うことで、結果的に治療費が抑えられる場合があります。大人の歯並びになってからの矯正治療が不要になる可能性があるためです。
6-3.心理的な影響の軽減
子供は歯並びの悩みからくるコンプレックスを抱えることがあります。
早期に矯正治療を始めることで、見た目や発音に関する不安を軽減し、日常生活での自信を持たせることができます。
7. まとめ
拡大装置は、矯正治療において非常に重要な役割を果たす装置であり、特に子供の治療において効果的です。
装置の種類や費用、治療期間について正確な情報を得ることで、治療をスムーズに進めることができます。
日常生活では、装置の影響で「しゃべりにくい」「舌が痛い」といった困難を感じることがあるかもしれませんが、適切な対策やケアを行うことで解決が可能です。
また、食事や洗浄に注意を払い、装置を清潔に保つことが快適な治療生活の鍵となります。
親御さんとしては、早期に矯正歯科医と相談し、最適な治療計画を立てることが大切です。
矯正治療は短期間で終わるものではありませんが、適切な知識と準備があれば、成功への道筋が見えてくるでしょう。
当院では、一人ひとりの患者さんに最適な矯正治療を提案し、治療中も患者さんが相談しやすい快適な環境を作るよう心掛けています。
矯正治療に興味のある方はお気軽にご相談ください。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
この記事を読んだ方が、より良い矯正治療を受けられることを願っています。
今後もどうぞご贔屓ご鞭撻のほどを。