皆さま、こんにちは。
「岡山矯正歯科」の院長をしている田川 淳平です。
当院は岡山県岡山市にあるクリニックで、歯並びや嚙み合わせを治療する矯正歯科を専門としています。
当院の患者さんは装置が目立たないアライナー矯正(マウスピース矯正)をご希望される方が多いですが、当院では従来のワイヤーの装置も得意としています。
皆さまの中には、「矯正治療をする時には口の中に小さなネジを埋め込むことがある」と聞いたことがある方もおられるかもしれません。
アライナー矯正でもワイヤー矯正でもどちらの場合でも、矯正治療ではネジを埋めて使うことがあり、このネジを『歯科矯正用アンカースクリュー』と言います。
歯科矯正用アンカースクリューは、難しい治療の場合や治療期間を短くしたい場合に用いることがある装置(皆さんに使うわけではありません)。
アンカースクリューが無かった時代では到底治療できなかったような患者さんでも、アンカースクリューを併用することにより治療が可能となることもある程です。
では、歯科矯正用アンカースクリューとはどんなものなのか?
今日は、アンカースクリューの特徴やメリット、アンカースクリューが入った患者さんはお家でどのようにケアをすれば良いかというケア方法などについてを日本矯正歯科学会の認定医である院長がお話させて頂きます。
- 歯科矯正用アンカースクリューとは?
- アンカースクリューのメリット
- アンカースクリューの埋入と治療の流れ
- アンカースクリューのケア方法
- よくある質問
- 最後に
1.歯科矯正用アンカースクリューとは?
アンカースクリューは簡単に言うと小さな金属のネジで、歯ぐきを通して骨に埋め込み固定して使う装置。
矯正治療での歯の移動をサポートするために用います。
直径は2 mm以下、長さは長いもので約10 mmくらいですが、当院でよく用いるものは約6 mmくらいと、本当に小さいものです。
私は患者さんには「歯ぐきにピアスを付けるイメージ」とよく説明しますが、本当にピアスを開けるくらいの感覚。
アンカースクリューは、長年にわたる研究と臨床試験を経て、その安全性と効果が確立されていて、患者さんの個々の状況に合わせて慎重に使用するため、リスクも最小限です。
さらに、アンカースクリューは主にチタン製であるため生体適合性が高く、体内に埋め込んでも拒絶反応が少ないです。
腕などの骨折後に手術で骨を固定する時にもチタン製のプレートが使われたりしますね。
2.アンカースクリューのメリット
矯正治療は、装置を用いて前歯と奥歯の押し合い、もしくは引っ張り合いで歯が動きます。
つまり前歯を動かそうとした時には奥歯が存在する方向、もしくはその反対方向にしか動かせない。
奥歯を動かす場合も同じです。
さらに作用反作用の法則があるため、前歯を後に動かそう(作用)とすると奥歯は前に動きます(反作用)。
しかしながら、奥歯とは関係ない方向に前歯を動かしたい場合や、反作用をかけずに歯を動かしたい場合もあり、その際にアンカースクリューを用います。
奥歯とは関係ない方向に前歯を動かしたい場合(奥歯を動かしたい場合も)
例えば、奥歯を後に動かす(遠心移動)、骨の中の方向に動かす(圧下)という動きを行うためには、アンカースクリュー無しでは実現することが難しいです。
アンカースクリューは色々な場所に埋め込むことが可能であり、そのアンカースクリューから歯を引っ張れば、歯を動かす方向の自由度は増えます。
反作用をかけずに歯を動かしたい場合
いわゆる出っ歯のタイプの患者さんの治療では、中間の歯(一般的には前から数えて4番目の歯)を抜いてすき間を作り、そのすき間に前歯を引っ込めていきます。
前歯が奥歯から引っ張られて後に動くこの時に、奥歯は前歯から引っ張られるために奥歯は前に動くわけです(作用反作用の法則)。
前歯が出ている程度には寄りますが、出っ歯の方の治療ではなるべく前歯を大きく後に引っ込めたいことが多いです。
しかし、せっかく歯を抜いて作ったすき間に奥歯が前に動いてしまうと、前歯を引っ込められる量が小さくなってしまう。
奥歯を前に動かさずに前歯を後に動かすのは通常は不可能なのですが、この動きを行いたい際にアンカースクリューを使うことがあります。
アンカースクリューは骨に固定されているため、アンカースクリューから前歯を引っ張ると、奥歯に反作用がかからないわけです。
3.アンカースクリューの埋入と治療の流れ
アンカースクリューの埋入は局所麻酔を使用して行います。
局所麻酔とは、歯医者さんでむし歯治療や歯を抜く際に用いる注射器型の麻酔で、細い針でチクッとした後に歯ぐきの中に麻酔の液を少量だけ入れていきます。
入れる麻酔液の量は、むし歯治療や抜歯と比較するとかなり少量で、麻酔液の量が少なくて済むということはそれだけしんどくない処置ということです。
アンカースクリューは、麻酔が効いた状態で入れていくため入れていく際の痛みはほとんどありません。
さらに入れていく処置自体は数分で終わります。
アンカースクリューを入れる前にはCTなどのレントゲンを基に、入れる場所や方向をしっかりと検討したうえで処置を行いますので、安全性の点に関してもご安心頂ければと思います。
入れる際は、木の板にドライバーでネジを入れていくのと同じイメージで、ほとんど抵抗が無く入っていきます。
アンカースクリューを入れるタイミングは、矯正治療のスタートの段階で入れることもあれば、矯正治療がある程度進んだ段階で入れることもあり、患者さんの状態によって異なります。
また、入れたアンカースクリューが緩んで揺れてきたり、取れてしまうこともありますが、この場合には一度取り外して別の場所に入れ直したりすることも。
そして、矯正治療が進み、アンカースクリューが必要なくなれば、アンカースクリューを取り外します。
取り外す際には局所麻酔を使用しなくても痛みがほとんど無いことが多いです。
4.アンカースクリューのケア方法
アンカースクリューの埋入後は、適切なケアが重要です。
以下の方法を守ることで、アンカースクリューの脱落を防ぐことができます。
- アンカースクリューに力をかけない。
- 埋入当日は激しい運動や湯舟につかることは避ける。
- 埋入から1週間はアンカースクリューを歯ブラシせず、しっかりうがいをする。
- 処方された抗生物質や鎮痛剤などを指示通りに服用する。
アンカースクリューを埋入した後に発生する可能性のあるトラブルと、その対処法について以下に説明します。
- 緩みや痛みがある場合の対処法
- 緩み:アンカースクリューが緩んだ場合は、医院に連絡してください。
- 痛み:設置後数日間の軽い痛みは通常ですが、激しい痛みや持続する痛みがある場合は鎮痛剤を服用し医院に相談してください。
5.よくある質問
Q1. アンカースクリューは痛いですか?
A1. アンカースクリューの埋入は局所麻酔を使用して行いますので、埋入時の痛みはほとんどありません。設置後、数日間軽い痛みや違和感を感じることがありますが、通常は自然に治まります。痛みが続く場合や強い痛みがある場合は、医院にご相談ください。
Q2. アンカースクリューは安全ですか?
A2. アンカースクリューは安全です。チタン製であり、生体適合性が高いため、体内で拒絶反応が起こることはほとんどありません。また、適切なケアを行うことで、感染のリスクも最小限に抑えられます。
Q3. アンカースクリューは目立ちますか?
A3. アンカースクリューは非常に小さいため、ほとんど目立ちません。
Q4. アンカースクリューが緩んだり外れたりしたらどうすればいいですか?
A4. アンカースクリューが緩んだり外れたりした場合は、医院に連絡してください。
Q5. アンカースクリューの取り外しは痛いですか?
A5. アンカースクリューの取り外しは基本的には局所麻酔を使用せず行いますが、痛みはほとんど感じません。取り外し後は、数日すると歯ぐきの穴が塞がり、骨の穴は数か月で塞がりますので、すぐに通常の日常生活を送ることができます。
Q6. アンカースクリューはどれくらいの期間使用しますか?
A6. 使用期間は治療計画や治療の進行状況によります。具体的な期間は、歯科医師が治療計画を立てる際や、アンカースクリューを入れる際に説明します。
6.最後に
歯科矯正用アンカースクリューは、矯正治療において非常に重要な役割を果たします。
主なメリットの再確認
- 奥歯とは関係ない方向に前歯を動かせる(奥歯を動かしたい場合も)
- 反作用をかけずに歯を動かせる
また、アンカースクリューを適切にケアすることが、アンカースクリューが外れないための成功の鍵ですので、毎日のケアをがんばりましょう。
岡山矯正歯科では、歯科矯正用アンカースクリューが必要な患者さんにはアンカースクリューを用いた矯正治療を行い、理想の笑顔を実現するお手伝いができます。
しかしながら、我々は患者さん皆さんの快適な治療を心掛けていますので、本当に必要な患者さんにのみ使用しています。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
このブログを読んで、歯科矯正用アンカースクリューについて知って、当院での矯正治療の初診カウンセリングを受けてみたいと思って頂けた方は、是非当院にお越しください。
この記事を読んだ方が、より良い矯正治療を受けられることを願っています。
今後もどうぞご贔屓ご鞭撻のほどを。