
こんにちは、岡山矯正歯科の院長 田川 淳平です。
2026年1月6日、田川院長がABOJCにて「Facial development and tooth eruption
An implant study at the age of puberty」という海外の論文について発表を行いました。©ABOJC2025
本稿では、その内容を整理し、関連文献もあわせてご紹介いたします。
矯正治療を考える時、多くの人が気にするのは「歯をどう動かすか」です。
けれど実は、歯は単独で動いているわけではありません。
顎の成長や顔つきの変化に合わせて「歯が生えてくる向きや位置」が少しずつ調整されます。
成長の際にこの調整がうまくいくと、見た目も噛み合わせも大きく崩れにくい。
逆にうまくいかないと、出っ歯っぽく見えたり、かみ合わせが深くなったり、すき間やガタガタが増えたりします。
この記事では、矯正の有名な研究である「思春期の成長と歯の生え方の関係」を、専門用語をできるだけ使わずに、患者さん目線で整理します。

- この記事で分かること
- まず結論
- ストーリーで理解する「顎の変化」と「歯の帳尻合わせ」
- 思春期に起きる「顎の回転」って何
- 本題「歯の帳尻合わせ」が主役
- 帳尻合わせを邪魔しやすいもの
- 叢生は親知らずが原因なのか
- 治療方針の話「抜歯は悪か」ではなく「条件次第」
- 大人の矯正にも関係あるのか
- 岡山矯正歯科での考え方
- 初診から精密検査へ進むべき理由
- FAQ
- まとめ
1. この記事で分かること
- 思春期に顔や顎がどう変わりやすいか
- その変化に合わせて歯がどう「帳尻合わせ」するか
- 帳尻合わせが崩れると何が起きるか
- 抜歯を含む治療方針を決める時に、なぜ成長評価が重要か
2. まず結論
思春期は、顎や顔つきが「回転するように」変わることが多い時期です。
にもかかわらず、見た目だけ見ていると、その変化が分かりにくいことがあります。
そして大事なのは、顎の変化そのものよりも「その変化に合わせて歯が生え方を調整できるか」です。
ここがズレると、噛み合わせや歯並びの乱れが強く出やすい。
3. ストーリーで理解する「顎の変化」と「歯の帳尻合わせ」
ここで、よくある場面を会話っぽく置きます。
患者さん「子どもの頃はそこまで気にならなかったのに、中学生くらいから前歯が出てきた気がします」
矯正歯科医「その時期は、顎が伸びたり顔つきが変わったりしやすいです。その変化に合わせて歯がうまく並ぶ人もいれば、うまくいかず乱れる人もいます」
患者さん「歯が勝手に乱れるんですか」
矯正歯科医「勝手にというより、顎の変化に合わせて歯が生える向きや位置が少しずつ調整されます。これがうまくいかないと、歯並びや噛み合わせが崩れやすいです」
この「うまく調整される仕組み」を、研究では強調しています。この記事では難しい言葉を避けて「帳尻合わせ」と呼びます。
4. 思春期に起きる「顎の回転」って何
4-1. 顎は「前に回る」人が多い
思春期の成長では、下顎が前に回るような変化をする人が多いと報告されています(前方部が上に上がる変化を「前に回る」と表現しています)。
上顎も同じ向きに変わりやすい。
ここで重要なのは「回る」という表現です。
顎は、成長する時にただ前に伸びるだけではなく、回転が混ざった動きをしやすい。
だから、前から見た写真だけでは説明がつきにくいことがあります。
4-2. なのに見た目では分かりにくい理由
さらに、顎の骨は成長すると同時に、表面の形も少しずつ作り替えられます。
この表面の形の作り替えをリモデリングと呼んで、リモデリングは顎の回転を打ち消すように起こることが多いため、顎の骨は成長によって回転していてもリモデリングによって「回転が少なく見える」ことがある。
このせいで、普通のレントゲン比較だけだと、顎の変化を読み違えるリスクがある。
本研究ではその点をかなり強調しています。

5. 本題「歯の帳尻合わせ」が主役
5-1. 顎が変わるほど、帳尻合わせが必要になる
顎が前に回るように変わると、単純に考えれば噛み合わせはズレやすい。
けれど多くの人は、歯が生える向きや位置が少しずつ調整されて、噛み合わせが大崩れしない方向へ動きます。
この帳尻合わせが十分だと、前歯の角度や奥歯の噛み方が大きく乱れにくい。
反対に、帳尻合わせが弱いと、出っ歯っぽさや深い噛み合わせ、すき間やガタガタが目立ちやすくなります。
5-2. よくある誤解「奥歯が伸びた」
矯正相談でよく聞くのが「奥歯が伸びてしまった気がする」という話です。
研究の見方では、これは奥歯だけが単独で伸びたというより、顎全体の変化と歯の生え方の調整が合わさって、そう見えることがある。
つまり「歯のせい」だけで片づけると、判断を外しやすい。
成長期は特に、顎の変化込みで考えないと読み違えます。
6. 帳尻合わせを邪魔しやすいもの
ここは患者さんが一番知りたい部分です。
研究では、日常の癖や口の使い方が、帳尻合わせの成否に関係しうることが示されています。
6-1. 舌の押し方
舌で前歯を押す癖があると、前歯が前に傾きやすくなります。
顎の変化に対して必要な調整と逆方向に働くと、噛み合わせが崩れやすい。
6-2. 口唇の力
唇を強く噛む、下唇を前歯に押し付ける、などが続くと、前歯の傾きに影響が出ることがあります。
6-3. 口呼吸や口が開きやすい状態
口が開きやすい状態は、舌と唇のバランスが崩れやすい。
結果として、歯の並びや噛み合わせの安定に影響しうる。
ここで大事な注意点があります。
癖があるから必ず不正咬合になる、という話ではありません。
けれど、成長期に噛み合わせが大きく動く人ほど、癖の影響が相対的に大きく見えることがあります。
7. 叢生は親知らずが原因なのか
「親知らずのせいで前歯がガタガタになった」と言われることは多いです。
研究では、親知らずが原因と断定できる明確な証拠は得られなかった、という立場が示されています。
つまり、ガタガタの原因を親知らずだけに決め打ちすると危ない。
歯列が短くなる変化はガタガタに結びつきやすいですが、その歯列が短くなる変化は、親知らずが育つ前から起きていることもあり、別の要因も絡む可能性がある。
この点は、成人女性の相談でもそのまま当てはまります。
大人になってからの親知らずが出てくる時期にガタガタが進んだように見えても、単一原因で片づけない方が良いです。
8. 治療方針の話「抜歯は悪か」ではなく「条件次第」
研究では、顎の変化が大きく起きそうなケースで、抜歯をかなり慎重に考えるべきだという趣旨が述べられています。
ただし、ここを雑に受け取ると危険です。
- 抜歯が常にダメという意味ではない
- 非抜歯が常に正しいという意味でもない
要点は「顎の変化が大きい小学生くらいの時に抜歯をするのはよく考えてから」ということです。
成長期は、今の歯並びだけ見て決めると、将来の変化に負けることがある。
9. 大人の矯正にも関係あるのか
大人は顎の成長がほぼ落ち着いています。なので「思春期の成長そのもの」は起きない。
それでもこの研究が大人に役立つ理由があります。
- 今の歯並びが、過去の成長と帳尻合わせの結果として出来上がっているから
- 癖や口の使い方が、歯の傾きや安定に影響しうるから
- 「なぜこの噛み合わせになったか」を理解すると、治療計画の納得感が増えるから
特に20代から50代の女性は、仕事や家事で忙しく、通院や装置の管理に現実的な制約が出やすい。
だからこそ、最初に「何が原因で」「何が優先で」「何をすると崩れやすいか」を言語化しておく価値があります。
10. 岡山矯正歯科での考え方
この記事の内容を踏まえると、矯正は「歯を動かす」だけで完結しません。
噛み合わせの安定や後戻りリスクまで含めるなら、最初の評価が重要です。
岡山矯正歯科では、口腔内スキャナーなどのデジタル機器を活用して、現状の歯並びを立体的に把握しやすい体制を整えています。
また日本矯正歯科学会の認定医が2名在籍しています。
さらに一般的に難しいと言われている抜歯を伴うマウスピース矯正にも対応できる体制があります。
ここで誤解してほしくないのは「誰でも同じ結果になる」と言いたいわけではない点です。
治療は状態によって幅があります。
だからこそ、精密検査で条件を揃えて評価することが必要です。
11. 初診から精密検査へ進むべき理由
初診相談は、ざっくり方向性を決める場です。
けれど、成長の影響や歯の傾きの原因まで丁寧に見ようとすると、初診だけでは情報が足りません。
精密検査で確認するのは、例えば次のような点です。
- 歯の傾きと噛み合わせのズレの「原因の当たり」をつける
- 抜歯が必要かどうかを詳しく評価する
- 仕上がりだけでなく、安定性や管理のしやすさまで計画に入れる
時間と費用をかける価値があるのは、後から方針が揺れてやり直しが増える方が、総コストが上がりやすいからです。
12. FAQ
Q1. 思春期に歯並びが急に悪くなるのはなぜですか
顎や顔つきが変わる時期で、歯の帳尻合わせが追いつかないと、ズレが目立ちやすくなります。
Q2. 口呼吸は歯並びに関係しますか
関係しうる、が正確です。口が開きやすい状態は舌と唇のバランスが崩れやすく、歯の傾きに影響しうるためです。
Q3. 舌癖は治せば歯並びも自然に治りますか
自然に治るとは限りません。癖の改善は重要ですが、歯の位置そのものは矯正治療が必要なことが多いです。
Q4. 親知らずは抜けばガタガタは止まりますか
止まると断言はできません。ガタガタは親知らず以外の要因も絡むことがあるためです。
Q5. 抜歯矯正は危険ですか
危険かどうかではなく、適する条件かどうかです。顎や噛み合わせの条件を精密検査で評価して判断します。
Q6. マウスピース矯正は管理が難しいですか
装着時間の自己管理が必要です。忙しい方ほど、生活動線に落とし込める計画が重要になります。
Q7. 抜歯を伴うマウスピース矯正は誰でもできますか
誰でもではありません。歯の動かし方に制約が出やすいので、適応の見極めが必要です。
Q8. 成長期の子どもの矯正は早い方がいいですか
早い遅いの二択ではありません。成長のタイプと課題によって、最適な開始時期は変わります。
Q9. 精密検査を受けたら必ず治療しないといけませんか
必ずではありません。検査結果を踏まえて、治療するかどうかを判断するための材料が増えるだけです。
Q10. 相談前にできることはありますか
舌で前歯を押す癖、口が開きやすい癖、唇の噛み癖などに気づいておくと、相談が具体的になります。
13. まとめ
思春期は顎や顔つきが変わりやすく、歯はその変化に合わせて帳尻合わせをします。
この帳尻合わせがうまくいくかどうかが、歯並びや噛み合わせの安定に大きく関係します。
そして、見た目だけでは顎の変化を読み違えることがあるため、成長期の治療方針はしっかりと検査をして評価する必要があります。
初診相談で方向性をつかみ、必要なら精密検査で根拠を固める。この順番が、時間と費用の無駄を減らします。
矯正治療は「歯を並べる」だけではなく、こうした骨格の特徴まで考えた上で進めていく必要があります。
岡山矯正歯科では、日本矯正歯科学会の認定医が精密検査や診断を行い、患者さん一人ひとりの骨格や歯並びに合わせた治療計画をご提案しています。
参考文献
A. Björkら
Facial development and tooth eruption An implant study at the age of puberty
American Journal of orthodontics. 1972 Oct;62(4):339-383.
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
この記事を読んだ方が、より良い矯正治療を受けられることを願っています。
今後もどうぞご贔屓ご鞭撻のほどを。
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