こんにちは、岡山矯正歯科の院長 田川 淳平です。
矯正治療後に歯並びが整い、美しい笑顔を手に入れたものの、「歯と歯の間に隙間ができてしまった」と悩む患者さんは少なくありません。
この隙間は、一般的に「ブラックトライアングル」と呼ばれます。
特に前歯にできることが多く、笑った際に目立つため、多くの患者さんがその見た目を気にするもの。
ブラックトライアングルはさらに、審美的な問題だけでなく、食べ物の詰まりや歯垢が溜まりやすくなるため、口腔内の健康にも影響を与えることが知られています。
矯正中の方が、「ひどいブラックトライアングルができた」、「ブラックトライアングルが治った」などと仰っているのを聞いたことがある方もおられるかもしれません。
今回は、ブラックトライアングルの原因とその対策を分かりやすく解説し、どのように予防や改善ができるのかをご紹介します。
- ブラックトライアングルとは?
- なぜ矯正治療中や治療後にブラックトライアングルができるのか?
- ブラックトライアングルの具体的な治療法と対策
- 矯正治療中にブラックトライアングルを予防するための具体的な方法
- まとめ
1.ブラックトライアングルとは?
1-1.ブラックトライアングルとは、歯と歯の間にできるすき間
ブラックトライアングルとは、歯と歯の間にできる黒い三角形の隙間のことを指します。
歯茎が後退したり、歯の形状によってこの隙間が現れることがあり、ひどいものになると特に審美的な問題として注目されます。
1-2.ブラックトライアングルの原因
ブラックトライアングルの原因にはいくつかありますが、ここでは主に考えられる原因を3つご紹介します。
1-2-1.歯の形態
歯の形態は人それぞれ異なりますが、一般的に前歯は逆三角形に近い形をしています。
この三角形の出っ張りが強い形態の方は、隣接する歯との接触面積が狭く、歯ぐきが下がった際にブラックトライアングルができやすくなります。
つまり、ブラックトライアングルは特に前歯に多く見られるため、審美的な問題として目立ちやすいです。
1-2-2.歯ぐきの退縮
歯の形態は逆三角形ですので、歯ぐき側にいけばいくほど、歯と歯の距離は遠くなります。
このため、歯周病などで歯ぐきが下がれば下がるほど、ブラックトライアングルはできやすくなります。
1-2-3.年齢による影響
加齢もブラックトライアングルの原因の一つです。
歯ぐきは年齢とともに誰しも自然に後退するため、特に30代以降になると歯ぐきが目に見えて下がる方が増えます。
これは自然な老化現象の一部ですが、歯ぐきの退縮は審美的に問題となることがあります。
また、歯周病などの歯ぐきの病気が併発すると、加齢とともに大きくできてしまう方もおられます。
1-3.ブラックトライアングルの具体的な影響
- 見た目の問題
前歯にブラックトライアングルができると、笑顔に自信が持てなくなる方も多いです。特に前歯は顔の中心に位置し、笑ったり話したりする際に非常に目立ちます。そのため、他人に与える印象にも大きな影響を及ぼします。 - 口腔内の健康への影響
ブラックトライアングルができると、隙間に食べ物が詰まりやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。特に歯間ブラシやフロスを使わないと、歯垢がたまりやすく、口臭の原因にもなりかねません。
2.なぜ矯正治療中や治療後にブラックトライアングルができるのか?
矯正中や治療後にブラックトライアングルが現れる原因はいくつかあります。
矯正治療自体が原因になる場合もありますが、患者さんの口腔環境や歯の特徴も影響します。
矯正中にブラックトライアングルができる原因は以下のものです。
2-1.歯の接触位置の変化
矯正治療により歯の位置が移動し、歯並びが正しい位置に矯正された結果、隣り合う歯と歯の接触状態が変化したり、歯茎の部分に隙間ができやすくなるためです。
2-2.歯ぐきが埋めている歯と歯のすき間の変化
矯正治療中に歯が大きく移動すると、歯ぐきにも影響が出ることがあります。
特に、元々大きく重なっていたガタガタの強い部分では、歯ぐきの量が少なくても歯と歯の間のすき間を歯ぐきで埋めることができますが、ガタガタが治って歯と歯のすき間が広くなるとすき間全体を歯ぐきで埋めることができなくなり、ブラックトライアングルができてしまいます。
つまり、歯ぐきが下がらなくてもガタガタをほどけばブラックトライアングルができる可能性は高いわけです。
2-3.矯正治療による歯ぐきの退縮
矯正治療により歯ぐきが退縮することもあります。
この場合には歯周病で退縮した時と同じように、ブラックトライアングルができてしまいます。
歯周病などが原因で元々退縮していた歯ぐきは、より退縮しやすいためリスクが高いです。
このため、歯ぐきの健康を保つことは、ブラックトライアングルを予防する上で重要なポイントです。
3.ブラックトライアングルの具体的な治療法と対策
ブラックトライアングルが気になる場合、いくつかの治療法や対策があります。
治療法は患者さんの口腔環境やブラックトライアングルの大きさ、歯ぐきの状態によって異なります。
以下に代表的な治療法や対策を紹介します。
3-1.IPR(歯と歯の間のやすりがけ)
ブラックトライアングルの原因の1つは、逆三角形の出っ張りが強い歯の形態であるとお話しました。
ブラックトライアングルを解消するために、矯正治療でよく行う処置にIPRと言って、歯の出っ張った部分をやすりがけして、出っ張りを少なくする処置があります。
この処置はやすりがけのため、一旦は歯と歯の間にすき間ができますが、矯正治療により歯と歯を近づけると、同時にブラックトライアングルも小さくできるわけです。
やすりがけと言っても、量は 0. 何mmのわずかな量ですから、見た目で大きく歯の形や大きさが変わることも無ければ、しみることも無いですし、むし歯になりやすさも変わりませんので、ご安心ください。
3-2.ダイレクトボンディング
ブラックトライアングルが歯の形状によって引き起こされている場合、コンポジットレジンという接着剤を使用して歯の隙間を埋めることができます。
コンポジットレジンは、むし歯治療の際に歯を削った部分に詰める詰め物なので、歯に引っ付く性質があります。
このため、ブラックトライアングルができている部分にコンポジットレジンを引っ付けることにより、ブラックトライアングルを小さくすることができます。
審美的にも自然な仕上がりを期待できるため、ブラックトライアングルが目立つ前歯に最適な方法です。
3-3.歯肉移植
歯ぐきが退縮してブラックトライアングルができている場合、歯ぐきの再生治療を行うことで改善が可能です。
歯肉移植とは、自分の別の場所の歯ぐきを移植する手術であり、退縮した歯ぐきを回復させることができるため、歯と歯の隙間を目立たなくすることができます。
この治療法は、ブラックトライアングルだけでなく、歯全体の健康を改善するためにも役立ちます。
4.矯正治療中にブラックトライアングルを予防するための具体的な方法
ブラックトライアングルを予防するためには、矯正治療の計画段階から慎重に対策を講じることが重要です。
ここでは、予防のための具体的な方法をご紹介します。
4-1.矯正治療の初期段階での歯ぐきの健康維持
矯正治療を開始する前から、歯ぐきの健康状態を維持することが非常に重要です。
歯ぐきがすでに弱っている状態で矯正を行うと、ブラックトライアングルのリスクが高まります。
治療前には歯周病のリスクを評価し、必要な治療を行ってから矯正を開始することが推奨されます。
4-2.歯間ブラシとデンタルフロスの活用
矯正治療中は、矯正器具が歯に装着されているため、口腔ケアが複雑になります。
特に、歯間ブラシやデンタルフロスの使用はブラックトライアングルの予防に非常に効果的です。
矯正治療中もこれらの道具を活用し、歯と歯の間の歯垢をしっかり除去する習慣をつけることが、歯ぐきの健康を守る鍵となります。
4-3.歯科医との継続的なコミュニケーション
矯正治療中は、歯科医とのコミュニケーションを密に取り、歯ぐきの状態を定期的に確認してもらうことが大切です。
ブラックトライアングルができるリスクが高い場合や、初期段階での歯ぐきの変化が見られた場合は、早めに対応策を講じることで、問題の進行を防ぐことができます。
特に、年齢や体質によって歯ぐきの後退が進行しやすい患者さんには、専門的なケアが必要となることがあります。
5.まとめ
矯正治療後にブラックトライアングルができることは、見た目や健康に影響を与えるため、多くの患者さんが不安に感じる問題です。
歯の形状や歯ぐきの後退、年齢による変化など、さまざまな要因が関わるため、患者さんごとに最適な治療法が異なります。
しかし、その原因を理解し、適切な対策を講じることで、ブラックトライアングルの発生を予防・改善することが可能です。
もしもブラックトライアングルが気になる場合は、遠慮せずに歯科医に相談し、自分に合った対策を見つけることが重要です。
当院では、一人ひとりの患者さんに最適な矯正治療を提案し、治療中も患者さんが相談しやすい快適な環境を作るよう心掛けています。
矯正治療に興味のある方はお気軽にご相談ください。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
この記事を読んだ方が、より良い矯正治療を受けられることを願っています。
今後もどうぞご贔屓ご鞭撻のほどを。