
こんにちは、岡山矯正歯科の院長 田川 淳平です。
2025年9月2日、田川院長がABOJCにて「Cranial base characteristics in anteroposterior malocclusions: A meta-analysis」という海外の論文について発表を行いました。©ABOJC2025
本稿では、その内容を整理し、関連文献もあわせてご紹介いたします。
「子どもの出っ歯が気になるけど、なぜこうなったんだろう?」
「自分の受け口は遺伝?それとも生活習慣のせい?」
矯正相談に来られる患者さんから、こんなご質問をいただくことがあります。
実際、出っ歯や受け口といった「不正咬合」には、遺伝や舌の癖、口呼吸などいろいろな原因があることが知られています。
でも実は、頭の骨(頭蓋骨)の形も、出っ歯や受け口の成り立ちに深く関係しているのではないかと考えられてきました。
そこで世界中の研究をまとめたメタアナリシス(たくさんの研究を統合して分析する方法)によって、「頭の骨の形とかみ合わせの関係」が詳しく調べられたのです。
この記事では、その研究結果を患者さん向けにわかりやすくまとめました。

- 研究の目的
- 研究の方法
- 結果(わかりやすくまとめ)
- この結果が意味すること
- 臨床的な意義(患者さんにとっての意味)
- まとめ
1. 研究の目的
この研究の目的は、
👉 出っ歯(上顎が前に出ている状態 = Class II)や受け口(下顎が前に出ている状態 = Class III)の人は、頭の骨の形にどんな特徴があるのか?
を明らかにすることでした。
2. 研究の方法
- 世界中の論文データベースから 671本の研究 を集め、その中から条件を満たした 20本 を厳選。
- 対象となったデータは 約3,000人 の子どもから大人まで。
- 分析したのは「頭の骨の長さ」や「頭の骨の角度」。これらが顎の位置やかみ合わせにどう関係するのかを比べました。
3. 結果(わかりやすくまとめ)
研究チームは、約3,000人分のデータをもとに「出っ歯(Class II)」「受け口(Class III)」「普通のかみ合わせ(Class I)」を比べました。
その結果――
出っ歯タイプ(Class II)
- 頭の骨の「前の部分の長さ」が長い
- 頭全体の骨の長さも長い
- 骨の角度も大きい
👉 結果として、上顎が前に出やすく、口元が出て見える傾向がある。
受け口タイプ(Class III)
- 頭の骨の「前の部分の長さ」が短い
- 頭全体の骨の長さも短い
- 骨の角度も小さい
👉 結果として、上顎が後ろに下がりやすく、下顎が前に出て見える傾向がある。
その他の部分
- 頭の骨の「後ろの部分」については、出っ歯・受け口との大きな関係は見つかりませんでした。
4. この結果が意味すること
- 出っ歯や受け口には「遺伝」や「舌の癖」「口呼吸」などいろいろな要因がありますが、頭の骨の形も一因になっていることが確認されました。
- 特に「頭の骨の前の部分の長さ」や「頭の骨の角度」が、上顎や下顎の位置に影響していると考えられます。
- 人種や成長の段階によっても違いがあり、欧米人とアジア人では傾向が異なる部分も見られました。
5. 臨床的な意義(患者さんにとっての意味)
- 矯正治療を考えるときには、歯や顎の状態だけでなく、頭の骨の形も背景にあることを知っておくと安心です。
- 「なぜ私が出っ歯なのか」「なぜ子どもが受け口なのか」という疑問に対して、骨格の成り立ちという視点からも説明ができます。
- 実際の治療計画では、セファロ(横顔レントゲン)やCBCT(3D画像)で頭の骨を含めて分析することで、より正確な診断と治療方針を立てられるのです。
6. まとめ
今回の研究からわかったことは――
- 出っ歯(Class II)は頭の骨が「長くて角度が大きい」傾向
- 受け口(Class III)は頭の骨が「短くて角度が小さい」傾向
- ただし人種や成長段階によって違いがある
- 頭の骨の形は、不正咬合の原因の一つとして関わっている
矯正治療は「歯を並べる」だけではなく、こうした骨格の特徴まで考えた上で進めていく必要があります。
岡山矯正歯科では、日本矯正歯科学会の認定医が精密検査や診断を行い、患者さん一人ひとりの骨格や歯並びに合わせた治療計画をご提案しています。
参考文献
Aixiu Gongら
Cranial base characteristics in anteroposterior malocclusions: A meta-analysis
Angle Ortho. 2016 Jul;86(4):668-80.