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医療コラム
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2025.07.04

【矯正中に虫歯になる?ワイヤー矯正・マウスピース矯正のリスクと予防法を解説!】


こんにちは、岡山矯正歯科の院長 田川 淳平です。

矯正治療を検討している方や、すでに始めている患者さんの多くが、次のような疑問や不安を抱えています。

「矯正中って、やっぱり虫歯になりやすいの?」
「虫歯ができたら、矯正はストップになるの?」
「ワイヤー矯正とマウスピース矯正では、虫歯のリスクは違うの?」
「そもそも虫歯だらけでも矯正はできるの?」

これらの悩みは決して珍しいものではありません。

実際に、矯正治療中に虫歯ができてしまったことで治療が中断したり、治療期間が長引いたというケースも少なくないのが現実です。

矯正治療は、見た目の歯並びを整えるだけでなく、噛み合わせの改善や将来の歯の健康維持にとっても非常に重要な医療です。

しかし、治療中に虫歯ができてしまうと、その矯正効果が損なわれたり、装置を外して虫歯治療を優先せざるを得ない事態になることもあります。

特にワイヤー矯正では、歯の表面に装置(ブラケット)を装着するため、日々の歯磨きが難しくなりがちです。

一方、マウスピース矯正では取り外して清掃ができる反面、歯磨きが不十分なまま装着すると虫歯のリスクが上昇してしまうことも知られています。

また、矯正治療を始めるタイミングに「虫歯があってもいいのか?」「治してからでないとダメなのか?」と迷われる方も多いですが、その判断には歯科医師の診断と治療計画が欠かせません。

この記事では、「矯正中に虫歯になるリスク」に焦点を当て、ワイヤー矯正・マウスピース矯正それぞれの特徴やリスク、予防のための具体的な方法、虫歯ができた場合の対応方法について詳しく解説していきます。

「矯正と虫歯、どっちが先?」という永遠のテーマにも正面から向き合い、虫歯予防をしっかり行いながら、快適に矯正治療を進めるための知識を身につけていただければと思います。

岡山矯正歯科の院長としての経験から、患者さんが安心して治療を受けられるようにサポートする視点で、この記事をお届けします。

  1. 矯正中に虫歯ができやすい理由とは?
  2. ワイヤー矯正中の虫歯リスクと注意点
  3. マウスピース矯正中の虫歯リスクと注意点
  4. 矯正中に虫歯ができたらどうなる?治療の順番と影響
  5. 虫歯を予防するためのセルフケアのポイント
  6. 矯正治療を始める前に虫歯を治すべき理由
  7. 虫歯だらけでも矯正治療はできる?
  8. 矯正治療中の歯科医院でのケアとプロの予防処置
  9. よくある質問(FAQ)
  10. まとめ:虫歯予防で快適な矯正ライフを
今回は矯正治療中の虫歯のリスクについてのお話です。
今回は矯正治療中の虫歯のリスクについてのお話です。

1. 矯正中に虫歯ができやすい理由とは?

矯正治療をしている間は、虫歯ができやすくなる――これは多くの歯科医師が口を揃えて言う事実です。

では、なぜ矯正中は虫歯のリスクが高くなるのでしょうか?

その理由は、大きく分けて以下の5つに分類されます。

① 装置による歯磨きの難易度アップ

ワイヤー矯正では、歯の表面にブラケットと呼ばれる小さな装置を付け、そこにワイヤーを通して歯を少しずつ動かしていきます。

この装置があることで、歯の表面や歯と歯の間に汚れがたまりやすくなるのです。

しかも、矯正装置が邪魔になって歯ブラシが届きにくくなり、いつも通りに磨いているつもりでも、磨き残しが増えがちになります。

プラーク(歯垢)や食べカスが残ったままになると、それを餌にする虫歯菌が活発に活動し始めます。

② 装置の影響で唾液の流れが滞る

唾液には、口の中を洗い流す自浄作用や、虫歯菌の出す酸を中和する作用があります。

ですが、矯正装置があることで、唾液がうまく流れず、汚れがその場にとどまりやすくなるのです。

とくに奥歯や歯と歯の間などは、唾液が届きにくいため、虫歯になりやすい「要注意ポイント」と言えるでしょう。

③ 治療の期間が長期に及ぶ

矯正治療は、多くの場合1年〜2年、あるいはそれ以上の期間が必要になります。

その間ずっと矯正装置が口の中にあるということは、それだけ虫歯リスクにさらされる時間も長いということです。

短期間で済む虫歯治療とは異なり、矯正治療では常にリスク管理をしながら進めていく必要があるのです。

④ 自己流のケアに頼ってしまう

矯正治療を始めると、「しっかり磨いているつもり」になりがちです。

しかし、実際には磨き残しが多く、歯科医院でのチェック時に「想像以上に汚れが残っていた」というケースは非常に多いです。

特に子供の矯正や、思春期の患者さんの場合、丁寧な歯磨きが習慣化していないこともあるため、保護者のサポートや歯科医師・衛生士の指導が不可欠です。


次章以降では、このリスクを前提に「ワイヤー矯正」「マウスピース矯正」それぞれの特徴と虫歯のなりやすさ、そして予防法をより具体的にご紹介していきます。

矯正治療中には虫歯のリスクが上がってしまいます。
矯正治療中には虫歯のリスクが上がってしまいます。

2. ワイヤー矯正中の虫歯リスクと注意点

ワイヤー矯正は、もっとも広く知られている矯正方法のひとつであり、確実に歯を動かす力があるため、多くの症例に対応できる優れた治療法です。

しかしその反面、口腔内に「固定された装置」を長期間装着することになるため、虫歯のリスクが非常に高まるという側面も持っています。

ここでは、ワイヤー矯正における虫歯のリスクと、それに対する具体的な注意点を詳しく見ていきましょう。

● リスク①:ブラケット周囲にプラークがたまりやすい

ワイヤー矯正では、歯の表面に「ブラケット」と呼ばれる金属やセラミックの小さな装置を装着します。

さらに、そのブラケット同士を「ワイヤー」でつなぎ、歯に持続的な力をかけて移動させていきます。

このブラケットとワイヤーがあることで、歯磨きが極めて難しくなります。

特にブラケットの周囲やワイヤーの下などは、歯ブラシが届きにくいため、プラークがたまりやすく、知らないうちに虫歯が進行してしまうケースもあります。

歯のブラケット周囲に白く濁った「脱灰(だっかい)」と呼ばれる初期虫歯が現れることも多く、見た目にも悪影響を与えかねません。

● リスク②:唾液の流れが遮断される

唾液には、口の中の汚れを洗い流す「自浄作用」と虫歯菌が出した酸を中和する「中和作用」があり、虫歯を防ぐために重要な役割を果たしています。

しかし、ワイヤー矯正では、装置が唾液の流れを妨げることで、唾液による虫歯を防ぐ作用が低下します。

また、装置の周囲に汚れが溜まったまま放置されると、酸を出す虫歯菌が活動しやすくなり、虫歯になるスピードが加速します。

● リスク③:虫歯ができても気付きにくい

ワイヤー矯正中は、歯の表面に常に装置がついているため、患者さん自身が虫歯の初期症状に気づきにくいという特徴があります。

たとえば、痛みが出るまで虫歯に気づかず、来院時には中等度以上に進行していたというケースもあります。

とくに歯と歯の間(隣接面)や歯ぐき近くの虫歯は、ブラケットの影に隠れて発見が遅れがちです。

● リスク④:矯正中の虫歯治療は制限される

虫歯ができてしまった場合、装置があることで治療の選択肢や精度に制限が出ることがあります。具体的には:

  • 虫歯が深い場合はブラケットを一時的に外す必要がある
  • 矯正中に虫歯ができると、虫歯治療と矯正が同時進行で複雑になる

このような理由から、ワイヤー矯正中は虫歯予防を徹底することが非常に重要です。

● 注意点と予防策

  1. タフトブラシや歯間ブラシを使う
     ブラケットの間や歯と歯のすき間は、歯ブラシだけでは不十分です。タフトブラシや歯間ブラシを使って、ブラケットの上下・歯間を丁寧に磨きましょう。
  2. 毎食後の歯磨きを習慣化する
     「1日1回の歯磨きでは不十分」です。矯正中は毎食後の歯磨きと、就寝前の丁寧なケアが必須です。
  3. 定期的なプロフェッショナルクリーニング
     歯科医院での定期メンテナンスを受け、専門家に清掃してもらうことで、見えないリスクを減らせます。

3. マウスピース矯正中の虫歯リスクと注意点

「マウスピース矯正なら虫歯の心配は少ないのでは?」と感じる方も多いですが、実はマウスピース矯正にも特有の虫歯リスクがあります。

特に近年では、インビザラインなどのマウスピース矯正が一般に広く普及したことで、虫歯トラブルの事例も増加傾向にあります。

見落としがちなリスクや患者さんが陥りやすい落とし穴、そして予防のポイントを詳しくご紹介します。

● リスク①:装着していると唾液が歯に届かない

マウスピース矯正では、1日22時間の装着が推奨されます。

この長時間の装着により、口の中は閉鎖された環境になります。

特に、マウスピース装着前にきちんと歯磨きをしていなかった場合、食べかすや糖分がマウスピース内に閉じ込められ、虫歯のリスクが高まります。

また、「ちょっとしたお菓子をつまんで、すぐにマウスピースを再装着する」などの習慣があると、虫歯の温床になりかねません。

● リスク②:飲み物にも注意が必要

マウスピースを装着したまま甘い飲み物(ジュース、スポーツドリンク、加糖コーヒーなど)を摂取すると、糖分がマウスピース内にたまり、歯の表面に長時間接触することになります。

これにより、虫歯のリスクが通常よりも大きく高まるのです。

マウスピース装着中に口にしていいのは「水のみ」が原則です。

● 注意点と予防策

  1. 毎回の装着前に歯を磨くこと
     「ちょっとした飲食の後でも必ず歯磨き」これが原則です。外出時は携帯用歯ブラシセットを常備しましょう。
  2. 飲み物は水だけにする
     糖分や酸を含んだ飲み物は、マウスピースを外してからにしましょう。口をゆすいでから再装着するのも大切です。
  3. 虫歯リスクの高い方はフッ素ケアを強化
     虫歯になりやすい体質の方は、フッ素ジェルやフッ素洗口液を毎日使用することでリスクを下げられます。
  4. 定期的なチェックを欠かさない
     虫歯ができても初期では自覚症状がないことが多いため、定期的な検診で早期発見・早期治療を行いましょう。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正でそれぞれに虫歯リスクがありますのでご理解ください。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正でそれぞれに虫歯リスクがありますのでご理解ください。

4. 矯正中に虫歯ができたらどうなる?治療の順番と影響

「矯正中に虫歯ができたらどうなるのか?」

これは多くの患者さんが最も気になるポイントの一つです。

矯正治療を始めた後で虫歯が発覚したり、治療途中に新たに虫歯ができてしまった場合、矯正治療の計画にどのような影響が出るのでしょうか。

この章では、矯正中の虫歯への対応方法と、その治療順序や治療計画への影響について詳しく解説します。

● 原則:虫歯治療は優先される

矯正治療と虫歯治療のどちらを先にすべきかという質問に対して、基本的な答えは「虫歯が優先される」です。

なぜなら、虫歯を放置したまま矯正治療を続けてしまうと、以下のような問題が起きるためです:

  • 虫歯が進行して神経まで達すると、歯にとって良くない

そのため、虫歯が発見された場合は一時的に矯正装置を外して虫歯治療を行い、完了後に再度矯正を再開する、という流れが一般的です。

● ケース別の対応例

【軽度な虫歯(初期の白濁やC1レベル)】

  • 虫歯が装置の近くで無ければ、装置を一時的に外すことなく、歯の表面からレジンなどで処置可能
  • 治療は1回で完了し、矯正への影響は最小限

【中程度の虫歯(C2〜C3)】

  • 装置下の治療が必要な場合には、装置の一部を外して治療する必要があるため、再装着に時間と費用がかかる場合も
  • 治療期間が数日〜数週間延びることもある

【重度の虫歯(神経治療が必要な場合)】

  • 神経(歯髄)を取り除く根管治療が必要
  • 被せ物(クラウン)などにより、ブラケットの装着位置が変わる可能性がある
  • 装置の再設計・治療計画の見直しが必要になる場合も

● 虫歯の影響は治療計画にも及ぶ

矯正治療は綿密な診断のもとで「どの歯をどう動かすか」「どこを支点にして力をかけるか」など、細かく設計されています。

虫歯で歯の形態が変わったり、抜歯が必要になった場合、当初の治療計画が大きく変更されることもあります。

また、虫歯があることで、治療の予測精度が下がったり、後戻りのリスクが高まることもあります。

● マウスピース矯正の場合の注意点

マウスピース矯正の場合、虫歯治療後に歯の形が変わると、マウスピースが合わなくなってしまうことがあります。

そのため、再スキャン・再製作が必要になり、追加の費用や期間が発生する場合があります。

● 痛みや違和感を放置しないで

矯正治療中に「いつもと違う痛みがある」「噛むとズキズキする」などの症状があれば、すぐに担当医に相談しましょう。

虫歯は初期のうちは無症状ですが、進行するにつれて痛みや腫れ、冷たいものがしみるなどの症状が出てきます。

早期発見・早期治療が矯正の中断を防ぐカギです。

5. 虫歯を予防するためのセルフケアのポイント

矯正治療中に虫歯を防ぐためには、日々の「セルフケア」が最も重要です。

歯科医院でのプロケアももちろん大切ですが、患者さん自身が毎日しっかりケアをすることが、虫歯予防の最大のポイントになります。

ここでは、矯正中に特に意識しておきたい虫歯予防のセルフケアの具体的な方法を、ワイヤー矯正・マウスピース矯正それぞれに分けてご紹介します。

● 基本のポイントは「プラークコントロール」

虫歯は、食べ物の糖分をエサにして酸を出す「ミュータンス菌」などの細菌によって引き起こされます。

つまり、虫歯の原因は“菌”と“糖”と“時間”です。

この3つの条件を減らすことができれば、虫歯は十分に予防できます。

  1. 菌:毎日の歯磨きで菌を減らす
  2. 糖:間食を減らし、砂糖の摂取をコントロール
  3. 時間:糖分が歯に触れている時間を短くする

この3原則をベースにして、具体的なケア方法を見ていきましょう。


● ワイヤー矯正中のセルフケアのポイント

① 歯ブラシは「矯正用」を選ぶ

矯正用の歯ブラシとして特殊な毛先をしたものもあります。

通常の歯ブラシでは届かない部分もきれいに清掃できます。

② 補助清掃用具をフル活用

  • タフトブラシ:ブラケットの周囲や奥歯の清掃に最適
  • 歯間ブラシ:歯と歯の隙間を効果的に清掃

③ 就寝前はとくに念入りに!

寝ている間は唾液の分泌が減少し、細菌が繁殖しやすい環境になります。

就寝前の歯磨きとフッ素洗口液の使用を習慣づけましょう。


● マウスピース矯正中のセルフケアのポイント

① 毎回の装着前に必ず歯磨き

「飲食したら必ず磨いてから再装着」
これを守ることで、糖分や食べかすがマウスピース内に閉じ込められるリスクを回避できます。

② 間食と飲み物に注意

糖分や酸を含む飲み物(スポーツドリンク、ジュース、加糖コーヒーなど)を摂る場合は、必ずマウスピースを外して口をゆすいでから再装着しましょう。


● 共通の予防アイテム

  • フッ素配合の歯磨き
  • デンタルリンス(洗口液)

● 習慣にするための工夫

  • 「歯磨きカレンダー」を活用し、磨いた回数を記録
  • 家族やパートナーにチェックしてもらう
  • 外出先用の歯磨きセットを常に携帯する

このように、日常生活の中で「気をつけるべきポイント」は多いですが、正しく意識すれば決して難しくはありません。

「矯正治療=虫歯になりやすい」ではなく、「正しいケアで矯正中でも虫歯ゼロをキープ」が可能です。

6. 矯正治療を始める前に虫歯を治すべき理由

「矯正治療を早く始めたい。でも虫歯もある。どっちが先?」

このような相談は、矯正相談の初診時によくいただく質問です。

結論から言えば、虫歯は必ず矯正治療前にすべて治しておくことが原則です。

その理由を、わかりやすく順を追って解説します。

● 理由①:虫歯は進行する

虫歯は進行していくものです。

このため、矯正治療前にすべての虫歯を先に治す必要があります。

● 理由②:矯正中の虫歯治療は難易度が高い

矯正装置がついた状態では、歯の周囲が金属や樹脂に覆われているため、虫歯の範囲が見えづらく、正確な治療が難しくなります。虫歯治療の際には、以下のような制限があります:

  • 必要に応じて装置の一部を外す必要がある
  • 歯科医が細かい操作を行いづらい

結果的に、虫歯治療に時間がかかり、矯正スケジュールにも遅れが生じる原因となります。

● 理由③:矯正治療計画に狂いが生じる

虫歯が進行して歯を大きく削ったり、神経を取ることになった場合、その歯の形や噛み合わせが変わってしまいます。

これによって、当初計画していた「歯の動き」や「装置の設計」が狂ってしまうのです。

特に、インビザラインなどのマウスピース矯正は、治療開始前に精密な歯型データをもとに全ステップの装置を作るため、治療後の歯の形状が変わると、マウスピースが合わなくなり、再設計が必要になります。

● 虫歯治療は保険適用。迷わず先に済ませるのが得策

虫歯治療は原則として保険診療の対象です。

一方、矯正治療は自由診療で高額になりがちです。

「せっかく高額な矯正を始めたのに、虫歯治療のために中断した」
「矯正装置の再設置費用がかかってしまった」

というような事態を避けるためにも、虫歯は矯正前にすべて治療しておくのが、結果的に時間的にも経済的にも合理的です。

矯正治療を開始する前に虫歯治療をしてもらう必要があります。
矯正治療を開始する前に虫歯治療をしてもらう必要があります。

7. 虫歯だらけでも矯正治療はできる?

「虫歯が多くて、矯正なんて無理じゃないですか?」

「歯医者さんに『まず虫歯を治してから』と言われて、それきり…」

虫歯がたくさんある方から、こんな声をいただくことがあります。

結論としては――虫歯が多くても矯正治療は可能です

ただし、矯正を開始する前に、いくつかの大切なステップを踏む必要があります。

この章では、「虫歯だらけでも矯正はできるのか?」という疑問に、現実的かつ前向きな視点でお答えします。

● まずは虫歯の全体像をチェックする「口腔内診査」から

矯正相談を受ける前に、まずは虫歯が何本あって、どの程度進行しているかを把握する必要があります。

虫歯の本数、部位、深さ、神経の状態などによって、矯正治療の進め方が変わるからです。

ここで大切なのは、虫歯治療と矯正を分けて考えないこと

総合的な治療計画を立てることで、「どの歯は残すのか」「どの歯は抜歯するのか」「矯正と並行できるのか」を見極めていきます。

● 抜歯が必要な場合もあるが、必ずしもマイナスではない

重度の虫歯で保存が難しい歯は、抜歯が必要になることがあります。

一見すると「抜歯=後退」と感じるかもしれませんが、矯正では「抜歯スペースを利用して歯列を整える」という考え方もあるため、抜歯が治療計画に組み込まれることも珍しくありません。

たとえば:

  • 虫歯で保存不可の歯を抜歯
    →そのスペースを利用して全体を後方移動し、出っ歯を改善

このように、虫歯を“治療上の前提”として活用できる場合もあります。

● 神経を抜いた歯やかぶせ物がある場合でも矯正可能

「根の治療をしてある歯(失活歯)」や、「クラウンがかぶっている歯」があっても、矯正は可能です。

特別な処置が必要になることもありますが、近年の矯正技術では多くのケースに対応できます。

ただし、失活歯は歯根吸収のリスクが高まるため、力のかけ方や移動量には慎重な設計が必要です。これは、専門の矯正歯科だからこそ対応できる領域です。


● 虫歯だらけでも諦めないで。治療は「人生を変える一歩」に

虫歯が多いことにコンプレックスを抱えていたり、歯科への苦手意識から長年治療を放置してしまった方も少なくありません。

しかし、だからこそ、矯正治療によって「見た目だけでなく、健康も自信も取り戻せる」可能性があります。

患者さんの中には、以下のような変化を経験された方もいます:

  • 虫歯をすべて治療してから矯正を開始し、「笑うことが苦手だった自分」が、堂々と笑えるようになった
  • 矯正を通じて、歯への意識が高まり、虫歯ゼロをキープできるようになった
  • 「虫歯だらけで恥ずかしい」という思いから、「治して本当に良かった」と言えるようになった

矯正治療は、見た目の美しさだけでなく、患者さんの気持ちも人生も大きく変える力を持っています。

虫歯が多くても、あきらめる必要はありません。

一歩ずつでも確実に、理想の口元と健康を目指して進んでいきましょう。

8. 矯正治療中の歯科医院でのケアとプロの予防処置

矯正治療中の虫歯予防において、患者さん自身のセルフケアはもちろん大切ですが、**歯科医院で受けるプロフェッショナルケア**も欠かせません。

とくに、ワイヤー矯正のように装置が複雑な場合は、自分だけのブラッシングではどうしても限界があります。

また、マウスピース矯正であっても、装着すると唾液が歯に届かないリスクが存在します。

ここでは、歯科医院で受けられる「プロケア」の内容や重要性を詳しく解説します。

● 定期メンテナンスの役割

矯正中は、約1カ月に1回の通院が一般的です。このタイミングで、以下のような項目をチェック・処置していきます。

  1. 装置のチェックと調整
     ブラケットやワイヤーの脱離、マウスピースのフィット状態を確認し、必要があれば調整を行います。
  2. 虫歯や歯周病の早期発見
     見えにくい奥歯や装置の裏側など、セルフチェックが難しい部分を定期的に確認。初期虫歯(白濁)の兆候も見逃しません。
  3. 清掃状態の確認
     磨き残しの部位を確認し、歯磨きのクセや弱点を患者さんと共有し、指導に活かします。
  4. 歯石の除去(スケーリング)
     セルフケアでは落としきれない歯石を専用の器具で除去し、歯肉炎や歯周病の進行を防ぎます。

● 装置別のケアの違い

【ワイヤー矯正の場合】

  • ブラケット周囲の清掃に特化した器具を使用
  • ワイヤーの下を丁寧に清掃
  • 装置の脱離や金属疲労による変形のチェックも行う

【マウスピース矯正の場合】

  • 歯の表面に着色や磨き残しがないかを確認
  • アタッチメントの脱離・着色もチェック
  • マウスピース自体の洗浄方法や交換タイミングを再確認

● 歯科衛生士による指導が重要

矯正中は、「どれだけ頑張って磨いても完璧に磨けない」という現実があります。

そこで、歯科衛生士による個別指導が重要なカギを握ります。

  • 磨きにくい部位を見つけてアドバイス
  • 装置ごとの磨き方のコツを伝授
  • 患者さんのライフスタイルに合わせた歯ブラシ選び

特に中高生の患者さんや、矯正初心者の方には、この衛生指導が矯正成功の大きな支えになります。

● 自分では気づけない初期トラブルを未然に防ぐ

「痛みが出るまで気づかなかった虫歯」
「マウスピースの変形による不適合」
「ブラケットの周囲の脱灰」

こうした“気づきにくいトラブル”を早期に発見できるのが、プロのチェックの強みです。

9. よくある質問(FAQ)

矯正治療を考えている、またはすでに進めている患者さんから寄せられる「虫歯」に関する質問は非常に多く、内容も多岐にわたります。

ここでは、実際のカウンセリングや診療でよくある質問にお答えします。


Q1. 矯正中に虫歯になったら、矯正装置は全部外す必要がありますか?

A. 状況によりますが、多くの場合は部分的に外して治療し、再装着できます。

軽度な虫歯であれば、装置を外さずにそのまま治療できることもありますが、中等度以上の虫歯になると、ブラケットやワイヤーを一部取り外して処置を行う必要があります。ただし、装置をすべて外して矯正を中止するというケースは稀です。


Q2. マウスピース矯正中も虫歯になりますか?

A. はい、なります。特に間違った使い方をするとリスクは高まります。

マウスピースは取り外し可能ですが、装着時間が長く、唾液の流れが制限されるため、虫歯菌にとって好環境になりやすいです。特に以下のような行動はNGです:

  • 装着前に歯磨きをせずに入れる
  • 甘い飲み物を装着中に飲む

Q3. 虫歯があっても矯正治療は受けられますか?

A. はい。ただし、事前に虫歯の治療が必要です。

矯正治療の前に、虫歯の状態を精査し、すべての虫歯を先に治療してから矯正に進みます。虫歯が重度で保存が難しい場合は、抜歯や被せ物の処置を先に済ませることもあります。


Q4. フッ素は毎日使った方が良いですか?

A. はい。矯正中は特に毎日のフッ素入り歯磨き粉の使用をおすすめします。

フッ素入り歯磨き粉の使用がお勧めです。特に矯正装置の周囲や奥歯は虫歯になりやすいため、再石灰化を促すフッ素は重要な予防手段になります。


Q5. 虫歯が多いので、まずどこに相談したらいいですか?

A. まずは矯正専門の歯科医院に相談しましょう。

矯正と一般歯科を分けて考えるのではなく、「総合的に口腔管理ができる医院」での相談がベストです。岡山矯正歯科では、虫歯の有無や本数にかかわらず、一人ひとりに合わせた治療プランをご提案しています。

10. まとめ:虫歯予防で快適な矯正ライフを

ここまで、「矯正治療中に虫歯になるリスクとその予防法」について、ワイヤー矯正とマウスピース矯正の両方にフォーカスして解説してきました。

改めて、この記事でお伝えしたかったことを整理しながら、患者さん一人ひとりが安心して矯正治療に臨むために意識しておくべきポイントをお伝えします。


● 矯正中は虫歯のリスクが確実に高まる

矯正装置があることで、歯磨きが難しくなったり、唾液の自浄作用が低下したりと、口腔内の衛生管理はどうしても複雑になります。

装置があることでプラークがたまりやすく、初期虫歯の段階で気づきにくくなることもあり、知らないうちに虫歯が進行してしまうケースも珍しくありません。

特に矯正期間は1〜2年、場合によっては3年以上に及ぶため、「いかに虫歯をつくらないか」は、矯正の成功と快適な通院ライフを左右する重要なカギになります。


● ワイヤー矯正とマウスピース矯正、それぞれに異なる虫歯リスクがある

  • ワイヤー矯正は固定式で清掃が難しい反面、どんな症例にも適応できる力強い治療法です。だからこそ、装置の周囲を丁寧に磨く工夫と、定期的なプロのケアが欠かせません。
  • マウスピース矯正は見た目が自然で取り外しが可能ですが、間違った使い方をするとマウスピース内が虫歯の温床になることもあります。装着前の歯磨きとマウスピースの清潔保持が大原則です。

どちらの治療方法を選んでも、「装置の特性に合った虫歯予防」を徹底することが大切です。


● 虫歯ができたら、すぐに矯正は止まるわけではない

「矯正中に虫歯ができたら、全部装置を外さなければならないの?」と心配になる患者さんも多いですが、実際はそうとは限りません。

軽度の虫歯であればそのまま治療可能なケースもあり、必要に応じて部分的に装置を外すことで対応できます。

ただし、進行してしまうと治療計画に大きな影響が出たり、治療費が余計にかかることもあるため、「虫歯をつくらない意識」と「異変に気づいたらすぐ相談する行動」がとても重要です。


● 矯正を始める前に虫歯の治療を済ませるのは絶対条件

「虫歯があるけど、矯正も早く始めたい…」というお気持ちはよく分かりますが、虫歯を放置したまま矯正をスタートすることは、将来的に大きなトラブルにつながります。

虫歯の状態によっては、そもそも矯正装置がつけられなかったり、治療計画が崩れてしまったりすることもあります。

矯正治療は“健康な歯”があってこそ最大の効果を発揮するため、「まず虫歯治療を優先する」という判断は、患者さんの利益を守るための大切なステップです。


● 虫歯が多くても矯正治療はできる。大切なのは「正しい順序」

虫歯がたくさんあるからといって、矯正治療をあきらめる必要はまったくありません。

現代の歯科治療は非常に進歩しており、歯の保存や根の治療、被せ物との連携などを活用すれば、虫歯が多い方でも十分に矯正治療を受けることが可能です。

特に専門性の高い矯正歯科医院では、虫歯の状態に応じた「抜歯の選択肢」や「仮歯を使った移動の工夫」など、柔軟で戦略的な治療設計が可能です。


● 日常のセルフケアとプロのサポートが矯正成功のカギ

毎日の歯磨きはもちろん大切ですが、プロによる定期的なケアや、歯科衛生士からのブラッシング指導を受けることで、自分では気づけないクセや磨き残しを改善できます。

  • 自宅での歯磨き粉によるフッ素ケア
  • 歯間ブラシやタフトブラシの活用
  • 定期検診とスケーリングの継続

これらを「面倒」と思わず、習慣として取り入れることが、矯正治療の成功と、虫歯ゼロのゴールに直結します。


● 矯正治療は“人生を変える医療”。だからこそ、虫歯予防を大切に

矯正治療は、見た目の美しさだけでなく、正しいかみ合わせを手に入れ、将来的な歯の健康寿命を延ばす医療です。

歯並びが整うことで笑顔に自信が持てるようになり、人前で話すことが楽しくなったという患者さんも多くいらっしゃいます。

そして、その素晴らしい治療の価値を最大限に引き出すためには、「虫歯をつくらないこと」「虫歯を早く見つけること」「虫歯をきちんと治すこと」が必要不可欠です。


● 最後に:矯正治療を安心して進めるために

矯正治療中に虫歯ができると、通院の手間や費用が増えるだけでなく、矯正治療そのもののモチベーションも下がってしまいます。だからこそ、最初のカウンセリング時にしっかりとお口の状態を確認し、治療の優先順位を明確にし、矯正治療と虫歯予防を両立できる計画を立てることが大切です。

岡山矯正歯科では、虫歯がある患者さんにも安心して治療に臨んでいただけるよう、丁寧な診断とカウンセリング、一般歯科との連携体制を整えています。

あなたの矯正治療が、健康で笑顔あふれる毎日につながりますように。

虫歯予防を徹底しながら、理想の歯並びを一緒に目指していきましょう。

当院では、一人ひとりの患者さんに最適な矯正治療を提案し、治療中も患者さんが相談しやすい快適な環境を作るよう心掛けています。

矯正治療に興味のある方はお気軽にご相談ください。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

この記事を読んだ方が、より良い矯正治療を受けられることを願っています。

今後もどうぞご贔屓ご鞭撻のほどを。

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