こんにちは、岡山矯正歯科の院長 田川 淳平です。
矯正治療は、歯並びや咬み合わせを改善するための重要なプロセスです。
矯正治療のワイヤー矯正の中で使用される「ブラケット」は、治療の中心的な役割を果たしますが、その一方でトラブルが発生することも少なくありません。
ブラケットが外れたり、口内に当たって痛みを感じたりするなどの問題は、患者さんの日常生活に影響を及ぼす可能性があります。
また、ブラケットの周りが食事などによって変色することもあり、見た目に不安を感じることもあります。
本記事では、矯正治療中に多くの患者さんが経験するブラケットに関するトラブルについて詳しく解説します。
具体的な原因を掘り下げ、それに対する効果的な対処法を紹介することで、患者さんの不安を軽減し、矯正治療をスムーズに進められるようサポートすることを目的としています。
特に、初めて矯正治療を受ける方にとって、ブラケットは慣れない装置です。
どのような仕組みで機能するのか、そしてどのようにケアすればトラブルを防げるのかを知ることで、矯正治療の不安や負担を大きく軽減できます。
この記事を通じて、矯正治療中の生活を少しでも快適にするためのヒントをお伝えします。
- 矯正のブラケットの役割と種類
- トラブル1:ブラケットが外れた場合
- トラブル2:ブラケットが口内に当たる痛み
- トラブル3:ブラケットの変色の原因
- トラブルを防ぐための日常ケア
- 矯正中におすすめの食事と注意点
- ブラケットトラブルを未然に防ぐポイント
- まとめ
1.矯正のブラケットの役割と種類
ワイヤー矯正や裏側矯正では、歯にブラケットという装置を接着します。
ブラケットにはスロットというワイヤーを通す構造があり、ワイヤーの矯正力はブラケットを通して歯に伝わり、歯が動いていく、これが矯正治療です。
つまり、矯正治療の中核を担うブラケットには、歯を正しい位置に導くという非常に重要な役割があるわけです。
この小さな装置は、患者さん一人ひとりの歯並びに合わせて配置され、ワイヤーと連動して歯を動かします。
しかし、患者さんにとってはブラケットの存在が「異物感」として感じられることも少なくありません。
まずはブラケットの基本的な役割と種類について詳しく解説します。
1-1.ブラケットの役割
ブラケットは、歯の表面に直接接着され、ワイヤーを固定するための器具です。
ワイヤーが歯に持続的な力を加えることで、少しずつ歯を理想的な位置に動かしていきます。
このプロセスには次のような利点があります。
- 歯並びを整える:隙間のある歯や重なり合った歯を適切な配置に移動させます。
- 咬み合わせを改善する:噛み合わせの不具合がある場合、それを矯正して正常な状態にします。
- 健康的な口内環境を実現する:歯並びが整うことで歯磨きがしやすくなります。
1-2.ブラケットの主な種類
矯正治療に使用されるブラケットには、以下のような種類があります。
それぞれの特徴を理解することで、自分に合ったブラケットを選ぶ際の参考になります(クリニックによって選べる場合と選べない場合があります)。
- メタルブラケット
- メリット:金属製のため丈夫で破損しにくく、適用範囲が広い。
- デメリット:目立ちやすい。
- クリアブラケット
- メリット:審美的な面で優れており、大人の患者さんに人気。
- デメリット:金属製に比べて割れやすい。
- セルフライゲーションブラケット
- メリット:クリップ様の機構でワイヤーを固定するため摩擦が少なく、歯の動きがスムーズ。
- デメリット:費用がやや高め。
- リンガルブラケット
- メリット:歯の裏側に装着するため、見た目を気にせず治療を進められる。
- デメリット:装置が複雑でオーダーメイドの外注で作成するため、費用が高い。
1-3.ブラケット装着時の課題
ブラケットの位置や厚みが異物感や違和感を生む要因です。
初期段階では、特に異物感や違和感を覚える患者さんが多いです。
しかし、適切なケアを行うことで時間とともに次第に慣れていきます。
2.トラブル1:ブラケットが外れた場合
ワイヤー矯正治療中、最もよくあるトラブルの一つがブラケットが外れた場合です。
このトラブルは、ワイヤー矯正治療を中断させる原因になりかねません。
以下では、その原因と対処法について詳しく見ていきます。
2-1.主な原因
ブラケットが外れる原因は多岐にわたります。
特に以下の要因が影響することが多いです。
- 食べ物の影響
硬い食べ物や粘着性のある食品は、ブラケットが外れるリスクを高めます。特に以下の食べ物は注意が必要です:- 硬いもの:氷、ナッツ、煎餅、リンゴの丸かじり。
- 粘着性のあるもの:キャラメル、ハイチュウ。
- 外部からの力
- スポーツ中の接触。
- 事故や転倒による外傷。
- 接着剤の劣化
長期間の使用により、接着剤が劣化してブラケットが外れることもあります。
2-2.外れた場合の対応方法
ブラケットが外れた際には、次の手順を守ることで問題を最小限に抑えることができます。
- ブラケットの保管
外れたブラケットを紛失しないよう、袋やケースに保管します。 - 矯正歯科への連絡
可能な限り早く矯正歯科に連絡を取り、治療の予約を取ります。 - 応急処置
ワイヤーがむき出しになっていて粘膜に当たり痛い場合は、矯正用ワックスを使用してお口の中を保護します。
2-3.外れないための予防策
- 硬い食べ物や粘着性のある食べ物を避ける。
- スポーツをする場合は接触に注意し、可能であればマウスガードを着用する。
- 定期的に矯正歯科に通院することを怠らない。
3.トラブル2:ブラケットが口内に当たる痛み
ワイヤー矯正治療中のもう一つのよくある問題は、ブラケットやワイヤーが唇や頬に当たることによる痛みです。
この症状は特に矯正治療初期やワイヤーの調整後に発生することが多いです。
3-1.痛みの原因
- ブラケットの位置の影響
ブラケットが口内の柔らかい部分に当たることで、口内炎や傷ができる場合があります。 - ワイヤーの動き
矯正治療中にワイヤーが歯を動かす際に、突起部分が口内を刺激します。 - 口内の慣れの問題
初めてブラケットを装着する際は、口内が異物感に慣れるまで時間がかかります。
3-2.痛みを軽減する方法
- 矯正用ワックスの使用
ブラケットやワイヤーが当たる部分に矯正治療の保護用ワックスをつけることで、摩擦を軽減し、痛みが弱まります。 - 口内保湿
口内が乾燥すると傷つきやすく、ブラケットも当たるため、こまめな水分補給を心掛けましょう。 - 軟膏の使用
薬局で市販されているジェルやクリームを痛い部分に使うと、摩擦を和らげる効果があります。
3-3.痛みの予防策
ブラケットの端がどうしても擦れる場合は、ゴムでカバーしてもらうよう矯正歯科医にお願いする。
擦れる箇所、擦れそうな箇所は保護用のワックスを使い、痛みが出ないようにする。
ただ、一度痛くなり、血豆のようになった粘膜はその後に少し硬く治癒してくれるため、自然と痛くないようになっていくのですが、保護用ワックスを使い過ぎるとこの過程が起きないため、痛くなりにくくもあります。
4.トラブル3:ブラケットの変色の原因
矯正のブラケット周りの変色は、多くの患者さんが経験するトラブルの一つです。
セラミック製のブラケットは吸水性が無いため全く変色せず、プラスチック製のブラケットはほんのわずかに変色します。
ただ、患者さんが感じるブラケットの変色は、実際にはブラケット自体が変色していることよりも、ワイヤーとブラケットを固定しているブラケット周りのリング状のゴムが変色していることが多いです。
変色が起きると見た目に影響を与えるだけでなく、治療中のストレスを増加させる原因にもなります。
ここでは、ブラケットの変色の原因とその対処法について詳しく説明します。
4-1.ブラケットが変色する主な原因
ブラケットやブラケット周りのゴムの変色には、以下のような要因が関係しています。
- 食べ物や飲み物による着色
- カレーやコーヒー、紅茶、赤ワインなどの食品や飲み物は、ブラケットやゴム部分に色素を付着させる可能性があります。これらは特に着色しやすい成分を含んでいるため、日常的に摂取すると変色が進む原因になります。
- 濃いソースが多く含まれる料理も、ブラケットの透明な部分を目立たせる結果となることがあります。
- 喫煙
タバコのヤニは、ブラケットだけでなく歯やワイヤーにも黄ばみをもたらします。特にクリアブラケットやゴム部分では、この影響が顕著に表れます。 - 口内ケア不足
- 毎日の歯磨きが不十分だと、食べ物の汚れがブラケット周囲に残ります。この汚れが時間とともに沈着し、ブラケットが変色する原因になります。
- プラークや歯石がたまることで、ブラケットやゴム部分がくすんで見えることもあります。
4-2.変色を防ぐ方法
ブラケットの変色を防ぐためには、日々のケアが重要です。以下のポイントを参考にしてください。
- 食べ物や飲み物に気を付ける
- カレーやコーヒーなど、着色しやすい食品を控えるか、摂取後すぐに水でうがいか歯を磨きましょう。
- ストローを使用することで、飲み物がブラケットに直接触れるのを防ぐことができます。
- 正しいブラッシング習慣を身につける
- 矯正装置用の歯ブラシ(歯ブラシのヘッドが少し小さいもの)や、ワンタフトブラシを使用してブラケット周囲の汚れをしっかり除去します。
- 定期的なクリーニングを受ける
- 歯科での定期的なメンテナンスを受けることで、専門的なクリーニングを行い、ブラケットや歯に付着した汚れを取り除けます。
- 矯正ゴムの交換
- ゴム部分の変色は避けられないことも多いため、定期的にゴムの交換を依頼すると良いでしょう。
5.トラブルを防ぐための日常ケア
矯正治療中のトラブルを防ぐためには、日常的なケアが欠かせません。
正しいケアを続けることで、ブラケットの外れや変色、痛みを最小限に抑えることができます。
5-1.歯磨きのポイント
ブラケット周囲の清掃は、矯正中の口内トラブルを防ぐための最も基本的な方法です。
- 矯正装置用歯ブラシ(歯ブラシのヘッドが少し小さいもの)の活用
- ブラケットの周囲を効率的に磨ける矯正装置用歯ブラシを使用します。
- 特にブラケットの周り、ワイヤーの下の歯面を念入りに磨くことが重要です。
- ワンタフトブラシの使用
- ワイヤーの下やブラケットの隙間に詰まった食べ物を除去するために、ワンタフトブラシを使用します。
- 正しいブラッシングの頻度
- 少なくとも食後と就寝前はしっかりと歯を磨きます。
- 時間がない場合でも、水や洗口剤で口をすすぐことで汚れを軽減できます。
5-2.その他のケアポイント
- 保護ワックスの使用
- ブラケットやワイヤーが当たって痛みを感じる場合は、矯正の保護用ワックスを使いましょう。これにより、摩擦が軽減され、痛みが和らぎます。
- 矯正歯科での通院を怠らない
- 月に1回程度の矯正治療を受けることで、ブラケットの位置やワイヤーの状態を確認してもらえます。
- 問題があれば早期に対応してもらえるため、大きなトラブルを防ぐことができます。
6.矯正中におすすめの食事と注意点
矯正治療中でも食事を楽しむためには、食べ物の選び方や工夫が重要です。
ブラケットへの負担を軽減しつつ、栄養バランスを保つことがポイントです。
6-1.避けるべき食べ物
ブラケットが外れたり、ワイヤーが曲がったりする原因となる食べ物、着色の原因となる食べ物には注意が必要です。
- 硬いもの
- ナッツ、煎餅、リンゴの丸かじりは、ブラケットに強い力が加わる可能性があります。
- 氷を噛むのも避けましょう。
- 粘着性のあるもの
- キャラメルやハイチュウなどの硬くて粘着性のある食品は、ブラケットに絡まりやすく、外れる原因になります。
- チョコレートなどのお菓子
- チョコレートなどのお菓子類は、ブラケットや歯の隙間に入り込みやすく、清掃が難しくなります。清掃が不十分であればむし歯のリスクもあります。
- 食べ物や飲み物による着色
- カレーやコーヒー、紅茶、赤ワインなどの食品や飲み物は着色のリスクが高いため注意してください。
6-2.おすすめの食べ物
矯正中でも安心して食べられる食べ物を選ぶことで、トラブルを防ぎつつ楽しめます。
- 柔らかい食べ物
- スープ、卵料理、豆腐、ヨーグルト、バナナなど、柔らかく噛みやすい食品が最適です。
- パスタやご飯も適度な柔らかさがあるため、安心して食べられます。
- 細かく切った食べ物
- 大きな肉や野菜は、小さく切ることでブラケットへの負担を軽減できます。
- フルーツも薄切りや角切りにして食べると良いでしょう。
- 蒸したり煮たりした料理
- 煮込み料理や蒸し料理は、食材が柔らかくなり、ブラケットへの負担を抑えられます。
6-3.食事後のケア
- 食事後は必ず歯磨きを行い、ブラケットや歯の周囲に食べ物が残らないようにします。
- 時間がない場合は、水や洗口剤で口をしっかりすすぐだけでも汚れを軽減できます。
7.ブラケットトラブルを未然に防ぐポイント
矯正治療中のトラブルを未然に防ぐためには、日常的な予防策を徹底することが重要です。
ブラケットの外れや痛み、変色などのトラブルを防ぐための具体的なポイントを以下に詳しく解説します。
7-1.食事中の注意点を守る
- 硬いものや粘着性のあるものを避ける
- 硬い食べ物(氷、ナッツ、煎餅など)は、ブラケットが外れる原因になります。
- 粘着性の高い食品(キャラメル、ハイチュウ)は、ブラケットが外れる原因にもなりますし、ブラケットに絡まり、清掃が困難になる可能性があります。
- 一口サイズに切る習慣をつける
- 食べ物を細かく切ることで、咀嚼時の力を分散し、ブラケットへの負担を軽減できます。
- 肉やリンゴなどの大きな食品は、細かく切り分けて食べることが推奨されます。
- 調理法を工夫する
- 食材を蒸す、煮込む、茹でることで柔らかくし、歯やブラケットへの負担を最小限に抑えることができます。
7-2.日常的な口内ケアを徹底する
- ブラッシング習慣の強化
- 食後と就寝前のブラッシングを徹底することで、食べ物の残りや汚れを取り除きます。
- 特にブラケット周囲やワイヤー下を丁寧に磨くことが重要です。
- ワンタフトブラシの活用
- ワンタフトブラシでブラケットの隙間や歯間を清潔に保つことで、虫歯や変色を防ぎます。
- 矯正の保護用ワックスの活用
- ブラケットやワイヤーが口内に当たる場合、矯正の保護用ワックスを使用することで痛みや不快感を軽減できます。
- 旅行や外出時に持ち歩くと、突然のトラブルにも対応しやすくなります。
7-3.定期検診で問題を早期発見
- 矯正歯科の通院を忘れない
- 月に1回程度の通院を忘れないことで、ブラケットやワイヤーの状態を確認し、必要に応じて調整を受けることができます。
- 問題が大きくなる前に対応することで、トラブルを未然に防げます。
- 気になる点を早めに相談する
- 痛みや違和感を感じた場合は、矯正歯科に早めに相談しましょう。問題を放置すると、トラブルが大きくなる可能性があります。
8.まとめ
矯正治療中は、ブラケットのトラブルが日常生活に影響を与えることがあります。
しかし、これらのトラブルは多くの場合、原因を理解し、適切な対策を講じることで軽減したり予防することが可能です。
以下に本記事の内容を再度振り返ります。
8-1.矯正ブラケットにまつわるトラブルとは
- 外れた場合の対処法
- ブラケットが外れた際には、すぐに矯正歯科に連絡を取り、受診までは応急処置としてワックスを使用することが重要です。
- 痛みや口内の不快感を軽減する方法
- 矯正の保護用ワックスや保湿、軟膏などを使用することで、ブラケットやワイヤーが引き起こす痛みを軽減できます。
- 変色を防ぐポイント
- 着色しやすい食品や飲み物を避け、正しいブラッシング習慣を身につけることで、ブラケットやブラケット周りのゴムの変色を防ぎます。
8-2.トラブルを未然に防ぐための工夫
- 食べ物の選び方と調理法
- 柔らかく食べやすい食品を選び、食材を細かく切るなどの工夫をすることで、ブラケットへの負担を軽減できます。
- 口内ケアの習慣化
- 矯正装置用ブラシ(歯ブラシのヘッドが少し小さいもの)やワンタフトブラシを使った毎日の清掃を徹底し、矯正歯科への毎月の受診を欠かさないことが大切です。
- 早めの対応でトラブルを回避
- 気になる点があればすぐに矯正歯科医に相談し、適切なアドバイスや調整を受けることで問題を早期に解決できます。
矯正治療は時間を要するプロセスですが、適切なケアと工夫を行うことで、理想の歯並びを目指しながら快適に過ごすことができます。
矯正治療中の生活をより良いものにするために、この記事を参考に日々のケアを進めてください。
どんな小さな疑問や不安でも、矯正歯科医に相談することを忘れずに、前向きに治療を続けていきましょう。
当院では、一人ひとりの患者さんに最適な矯正治療を提案し、治療中も患者さんが相談しやすい快適な環境を作るよう心掛けています。
矯正治療に興味のある方はお気軽にご相談ください。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
この記事を読んだ方が、より良い矯正治療を受けられることを願っています。
今後もどうぞご贔屓ご鞭撻のほどを。