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医療コラム
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2024.12.26

【矯正治療で歯が全然動かない!?アンキローシスの原因と対処法を解説】


こんにちは、岡山矯正歯科の院長 田川 淳平です。

矯正治療は、歯並びや噛み合わせを整えるために欠かせない医療行為です。

多くの患者さんは、治療が進む中で少しずつ歯が動いていく感覚を実感するものです。

しかし中には、「歯が全然動かない」と感じる方もいます。

治療がスムーズに進まないと、患者さんは不安や焦りを抱きやすくなります。

この状態にはさまざまな要因が考えられますが、その一つとして挙げられるのが「アンキローシス(骨性癒着)」です。

アンキローシスは、歯が骨と直接癒着してしまい、通常の矯正治療で歯を動かすことが困難になる状態です。

このようなケースでは、適切な診断と治療が欠かせません。

しかし、「アンキローシス」という言葉を耳にしても、具体的にどのような状態で何が原因なのか、あまり詳しく知られていないのが現状です。

また、アンキローシスによる問題は、前歯や犬歯、奥歯など部位ごとに異なり、それぞれの特性に応じた対応が求められます。

本記事では、アンキローシスについての基本情報をわかりやすくお伝えするとともに、その原因や治療法について詳しく解説します。

また、インプラントや抜歯といった選択肢が必要になる場合についても取り上げ、患者さんにとって最適な治療を選ぶ際の参考にしていただける内容を目指します。

矯正治療中に歯が動かないと感じた場合や、アンキローシスについて疑問を持たれている方はぜひ最後までお読みください。

目次

  1. アンキローシスとは?
  2. アンキローシスが起きる原因
  3. 矯正治療中にアンキローシスが疑われるサイン
  4. 前歯・犬歯・奥歯のアンキローシスの症状
  5. アンキローシスへの具体的な治療法
  6. アンキローシスを予防する方法
  7. まとめ:アンキローシスと向き合うために
アンキローシスでは鎖に繋がれたように歯が動かなくなります。
アンキローシスでは鎖に繋がれたように歯が動かなくなります。

1. アンキローシスとは?

まずは、「アンキローシス(骨性癒着)」という言葉の意味について詳しく見ていきましょう。

アンキローシスとは、歯が本来持つはずの柔軟性を失い、骨と直接癒着してしまった状態を指します。

歯の周りには通常、歯根膜という弾力性のある柔らかい膜があり、その歯根膜が歯と骨を繋いでいます。

この歯根膜があるため、歯に矯正力をかけた際に歯の周りの骨が作り替えられ、歯が移動することができます。

しかし、アンキローシス(骨性癒着)が起こると歯根膜が失われ、矯正治療で歯を動かそうとしても全然動かない、つまり、歯が骨に「固定」されてしまうという問題が生じます。

この状態では、矯正器具を使用しても歯を動かせず、治療が進行しない原因となります。

アンキローシスは、矯正治療中に臨床診断を通じて発見されることが一般的です。

矯正治療を進めていく中で、歯が動かないことを矯正歯科医が発見し、調査を進める中で初めて診断されるケースも多いです。

つまり、矯正治療前に発見することは大変難しく、治療前の診断はかなり稀です。

この問題が特に起こりやすいのは、前歯や犬歯、奥歯など特定の部位に限定されることがありますが、どの歯にも起こる可能性があるため注意が必要です。

また、アンキローシスが発生する歯は通常、外傷や炎症、埋伏歯などの特定の条件を抱えていることが多いです。

このような歯は矯正治療の妨げになるだけでなく、全体の歯列や噛み合わせに影響を及ぼす可能性があります。

そのため、早期発見と適切な対応が治療成功の鍵となります。

2. アンキローシスが起きる原因

アンキローシスが起きる背景には、さまざまな原因が存在します。ここでは、それぞれの要因について詳しく解説します。

外傷による影響

歯の外傷はアンキローシスの主な原因の一つです。

転倒やスポーツなどで歯を強く打った場合、歯根膜が損傷し、その部分が骨と癒着してしまうことがあります。

特に、幼少期や成長期に受けた外傷は、後々の矯正治療に影響を及ぼす可能性が高いです。

外傷を受けた直後には問題がなくても、時間が経つにつれてアンキローシスが進行することがあります。

炎症や感染

慢性的な炎症や感染もアンキローシスの引き金となります。

歯周病や歯根の感染が長期間続くと、歯根膜が破壊され、骨との直接的な癒着が起こる可能性があります。

このようなケースでは、炎症をコントロールすることが治療の第一歩となります。

埋伏歯(生えてこない歯)

埋伏歯は、歯が正常な位置に生えずに骨の中に埋まったままの状態です。

このような歯は、歯根膜の機能が失われやすく、アンキローシスが発生するリスクが高いです。

特に犬歯は埋伏歯になりやすい部位であり、矯正治療で動かそうとした際に問題が発覚することがあります。

これらの原因を把握し、矯正治療の計画段階や治療途中で適切に対応することが、患者さんにとって最良の結果を得るための重要なポイントとなります。

アンキローシスのリスクがある患者さんでは、矯正治療を進める前にしっかりと診断を行い、適切な対策を講じることが求められます。

3. 矯正治療中にアンキローシスが疑われるサイン

矯正治療が計画通り進まないとき、特に特定の歯が全然動かないと感じる場合には、アンキローシスの可能性を考える必要があります。

治療中に以下のような兆候やサインが見られる場合は、すぐに矯正歯科医に相談しましょう。

アンキローシスが疑われる場合、早期の発見と診断が治療の成功に大きく影響を与えます。

特定の歯が全く動かない

通常、矯正治療では数か月ごとに歯が少しずつ動いていきます。

しかし、特定の歯が全然動かない場合、それはアンキローシスの兆候である可能性があります。

矯正装置を調整しても改善が見られない場合は、アンキローシスを疑うこともあります。

周囲の歯だけが動く

矯正治療では、歯列全体がバランスよく動くことが理想的です。

しかし、アンキローシスが発生している場合、その歯だけが固定されたように動かず、周囲の歯だけが動いてしまいます。

この結果、歯列全体のバランスが崩れ、噛み合わせや見た目に影響を与えることがあります。

歯を叩くと特有の音がする

アンキローシスが疑われる歯を軽く叩くと、通常の歯とは異なる金属を叩いた時のような高い音がすることがあります。

これは、歯根膜が失われて歯が直接骨に癒着しているためです。

この方法は簡易的な診断手法の一つです。

これらのサインを見逃さず、適切な診断を受けることで、治療計画を早期に見直し、最適な対応を取ることが可能になります。

矯正治療中に動きが悪い歯があったら、矯正歯科医はアンキローシスを疑います。
矯正治療中に動きが悪い歯があったら、矯正歯科医はアンキローシスを疑います。

4. 前歯・犬歯・奥歯のアンキローシスの症状

アンキローシスはどの歯にも発生する可能性がありますが、部位によって症状や影響が異なります。

以下では、前歯、犬歯、奥歯それぞれの特徴と課題について詳しく解説します。

前歯のアンキローシス

前歯は見た目の美しさに直結する部位であり、矯正治療では特に重要なエリアです。

しかし、前歯にアンキローシスが発生すると、治療が進まず、歯列全体の審美性が損なわれる可能性があります。

例えば、出っ歯やすきっ歯を矯正したい場合、アンキローシスが原因で前歯が動かないと、希望する結果を得ることが難しくなります。

さらに、前歯が動かないことで、他の歯に過度な負担がかかり、噛み合わせのバランスが崩れるリスクもあります。

矯正歯科医が診察で異常を見つけた場合は、抜歯や特殊な治療方法を検討することがあります。

犬歯のアンキローシス

犬歯は噛み合わせのガイドとして重要な役割を果たす歯です。

矯正治療では犬歯の適切な位置への移動が成功の鍵となりますが、犬歯にアンキローシスが発生すると、その動きが制限されます。

特に埋伏犬歯(生えてこない犬歯)がアンキローシスを起こしている場合、抜歯などの外科的処置が必要になることが多いです。

犬歯のアンキローシスは、見た目だけでなく、全体の噛み合わせに大きな影響を及ぼすため、矯正治療の中でも難易度が高い課題の一つです。

犬歯の問題がある場合、治療計画を慎重に立てる必要があります。

奥歯のアンキローシス

奥歯は噛む力を支える重要な役割を担っていますが、アンキローシスが発生すると、その機能が大きく損なわれます。

奥歯が動かないことで、他の歯に負担がかかり、噛み合わせが不均衡になることがあります。

特に矯正治療中に奥歯が動かない場合、他の歯列全体に悪影響を及ぼす可能性があるため、早期の対策が必要です。

奥歯のアンキローシスは、前歯や犬歯に比べて発見が遅れることが多いため、定期的な診査が非常に重要です。

また、奥歯はインプラントや補綴物の設置が検討されるケースが多いため、治療計画を柔軟に変更する必要があります。

5. アンキローシスへの具体的な治療法

アンキローシスによって全然歯が動かない状態に対処するためには、状況に応じた適切な治療法を選ぶことが重要です。

以下では、一般的に用いられる治療法について詳しく説明します。

亜脱臼

骨と癒着してしまっている歯に外科的な力をかけ、グラグラにすることで、癒着を離す方法があります。

これによって全然動かない歯が動くようになる場合があります。

ただ、一旦動くようになったとしても、移動途中に再度アンキローシスを起こし、全然動かないようになることもあります。

その場合には再度亜脱臼を試みることもあります。

この方法は侵襲があるものの、歯を保存できる可能性が高まるため、慎重に検討されます。

亜脱臼させるための外科的な力をかける際には、歯が破折してしまうリスクもあるため、破折してしまったら、抜歯が必要になります。

抜歯とその後の処置

アンキローシスが重度で歯が全く動かない場合、該当する歯を抜歯するのが最善の選択肢となることもあります。

抜歯後には、矯正装置を使用して他の歯を理想的な位置に移動させ、歯列全体を整え、抜歯した部位には補綴処置(インプラント、ブリッジ、入れ歯など)が必要になります。

特に前歯や犬歯の場合、審美性を考慮して治療を進める必要があります。

インプラント治療

抜歯後の空隙が大きい場合や、機能的な問題が残る場合には、インプラントが有効な選択肢となります。

インプラント治療は、審美性と機能性を補います。

特に奥歯のアンキローシスのための抜歯では、インプラントが多く用いられます。

特殊な矯正装置の使用

特殊な矯正器具を用いることで、アンキローシスが発生している歯を部分的に動かす治療が可能な場合もありますこの方法は、アンキローシスが軽度である場合に限り適用されます。

これらの治療法を選択する際には、患者さんの症状や治療のゴールを十分に考慮し、最適なプランを立てることが重要です。

また、治療前には患者さんへの詳細な説明を行い、十分に納得した上で治療を進めるよう心がけます。

6. アンキローシスを予防する方法

アンキローシスの発生を完全に防ぐことは難しいですが、適切なケアや予防措置を講じることで、そのリスクを軽減することが可能です。

特に矯正治療を予定している場合や治療中の場合は、以下のポイントを意識することが重要です。

外傷後の早期対応

歯の外傷がアンキローシスの原因となることは多く、転倒や事故などで歯を強打した場合は、症状が見られなくても必ず歯科医の診察を受けることが必要です。

特に、成長期の子どもが転倒などで前歯を打った場合、外見上問題がなくてもアンキローシスが後々進行するリスクがあります。

外傷後に早期対応することで、歯根膜の損傷を最小限に抑え、骨との癒着を防ぐ可能性が高まります。

埋伏歯の早期診断と治療

埋伏歯(骨の中に埋まった歯)は、アンキローシスのリスクが高い状態です。

このような歯を早期に発見し、適切な処置を行うことで、将来的な矯正治療をスムーズに進めることができます。

定期的なレントゲン検査を受けることで、埋伏歯の存在を早期に把握し、必要に応じて外科的処置や矯正装置による管理を開始することが推奨されます。

長期間放置された虫歯や歯周病の予防

虫歯や歯周病による炎症がアンキローシスを引き起こすケースもあります。

特に、慢性的な炎症が続くと歯根膜が破壊され、骨との癒着が進むことがあります。

これを防ぐためには、定期的な歯科検診と日々の丁寧なブラッシング、フロスの使用が重要です。

また、矯正治療中は装置周囲の清掃が不十分になりがちなため、矯正歯科医からの指導に従って適切なケアを行いましょう。

矯正治療中の定期的な治療

矯正治療中には、定期的な診察やレントゲン検査を通じて歯の動きや状態を確認することが重要です。

歯が思うように動かない場合、早期にアンキローシスを疑い、対応策を講じることで治療の遅延や問題を最小限に抑えることができます。

外傷予防のためのマウスガードの使用

スポーツ活動中に歯を保護するため、特にコンタクトスポーツを行う場合には、マウスガードの使用を推奨します。

これにより、歯や歯根膜へのダメージを防ぎ、アンキローシスのリスクを低減できます。

これらの予防策を意識しながら矯正治療を進めることで、アンキローシスの発生リスクを抑え、スムーズな治療を実現することが可能です。

アンキローシスの歯は抜歯が必要になることもありますので、予防が大事です。
アンキローシスの歯は抜歯が必要になることもありますので、予防が大事です。

7. まとめ:アンキローシスと向き合うために

矯正治療中に歯が全然動かないと感じる場合、その背後には「アンキローシス(骨性癒着)」という問題が潜んでいる可能性があります。

アンキローシスは、歯が骨と直接癒着してしまい、通常の矯正装置では動かせなくなる状態です。

この状態を無視して治療を続けると、治療計画の遅延や歯列全体のバランスの乱れを引き起こす可能性があります。

早期発見の重要性

アンキローシスの治療成功には、早期発見が欠かせません。

早期に問題を特定し対応することで、治療の選択肢を広げることができます。

患者さんに適した治療計画を立てる

アンキローシスが確認された場合、亜脱臼、抜歯、インプラントなどの選択肢を検討する必要があります。

これらの治療法は患者さん一人ひとりの状態や希望に応じて選ばれます。

また、矯正治療の目的やゴールを明確にし、患者さんと矯正歯科医が共通の理解を持つことが成功の鍵です。

矯正治療中のコミュニケーション

矯正治療は長期間にわたるプロセスであり、患者さんと矯正歯科医のコミュニケーションが非常に重要です。

治療中に疑問や不安を感じた場合は、遠慮せずに相談することで、問題を早期に解決できます。

また、治療の進捗や歯の状態について定期的に確認することが、安心して治療を進めるためのポイントとなります。

専門的な治療を受けるための選択

アンキローシスを伴う矯正治療は、高度な診断技術と治療経験が求められるケースが多いです。

そのため、認定医や専門医による診療を受けることで、より適切な対応が期待できます。

矯正治療を始める際には、経験豊富な矯正歯科医を選ぶことをおすすめします。

当院では、一人ひとりの患者さんに最適な矯正治療を提案し、治療中も患者さんが相談しやすい快適な環境を作るよう心掛けています。

矯正治療に興味のある方はお気軽にご相談ください。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

この記事を読んだ方が、より良い矯正治療を受けられることを願っています。

今後もどうぞご贔屓ご鞭撻のほどを。

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