こんにちは、岡山矯正歯科の院長 田川 淳平です。
矯正治療は、歯並びの改善や噛み合わせの調整を目的に行われる治療ですが、治療費が高額になるため、多くの患者さんが「保険は使えないの?」という疑問を抱きます。特に、お子さんの矯正や、重度の噛み合わせの問題を抱えている方にとって、費用の問題は切実です。
「矯正治療に100万円以上かかると聞いて諦めた」「保険が使えるなら受けたかった」というお声は、私のクリニックにもよく届きます。費用の壁から治療を踏み出せない方が、実は制度を知らないだけで保険適用の対象になっていたというケースもあります。
実際、矯正治療は自由診療に分類されることがほとんどですが、特定の条件を満たす場合に限り、健康保険が適用されるケースが存在します。この記事では、2026年時点の最新情報をもとに、保険が適用される条件・対象疾患・費用の目安・手続きの流れまでを詳しく解説します。
矯正治療の費用負担を少しでも減らしたいとお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。
この記事でわかること:
- 矯正治療が保険適用外となる理由
- 保険が適用される条件と対象疾患(2026年版)
- 費用の具体的な目安
- 保険適用の矯正治療を受けるための手続きの流れ

1.矯正治療が基本的に保険適用外となる理由とは?
一般的に、矯正治療は保険適用外とされています。保険診療は病気や怪我の治療が主な対象であり、歯並びを整える目的の治療は「審美的な改善」とみなされるためです。
矯正歯科医として長年診療を続けてきた私の立場からも、この判断は理解できる部分があります。保険診療の財源は税金であり、まず命の危険がある病気や深刻な疾患から優先して保険が適用されるべきです。矯正治療が保険適用されていない背景には、こうした医療資源の優先順位という考え方があります。
とはいえ、噛み合わせの問題は食事や発音、さらには心理的な影響にも関わる重要な問題です。深刻な噛み合わせの問題を抱えながら、費用の壁から治療を諦めてしまう患者さんを見るたびに、制度の充実を願う気持ちがあります。こういった背景から、矯正治療は現状では自由診療扱いとなり、費用も全額自己負担が一般的です。たとえば、成人の矯正治療は80万〜120万円程度、マウスピース型矯正装置では100万〜150万円かかることも少なくありません。こうした費用の高さから治療を諦めてしまう方も少なくないのが現実です。
ただし、医学的に治療が必要と判断される一定の条件を満たす場合には、例外的に保険が適用されます。次のセクションで詳しく確認していきましょう。
2.保険適用となる矯正治療の条件と症例【2026年最新版】
保険適用となるのは、歯並びや噛み合わせに深刻な医学的問題がある場合に限られます。2026年時点では、以下の条件に該当する場合が保険適用の対象となります。
なお、2024年度の日本矯正歯科学会学術大会の市民公開講座でも「保険診療が適用される矯正歯科治療」というテーマで講演が行われており、社会的な関心が高まっていることがうかがえます。
2-1.子供の矯正治療で保険が適用されるケース
唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)
生まれつき上顎や唇に裂け目が生じている先天的な疾患です。矯正治療と口唇裂・口蓋裂の修復手術が必要とされ、治療が長期にわたるため保険が適用されます。産まれた直後からスタートし、成長期を通して矯正治療が必要なため、患者さんとご家族にとって経済的な支えとなる制度です。多職種のチームが連携して治療にあたるため、矯正歯科だけでなく形成外科や言語療法士などとの協力が必要になることも多くあります。
3本以上の萌出不全
口の中に出てこられない永久歯が3本以上あり、歯ぐきを切開して開窓し、牽引する処置が必要な場合に保険適用となります。永久歯が1本埋まっているケースは珍しくありませんが、3本以上となるとかなり稀な状況です。こうしたケースでは、歯の萌出を助けながら矯正治療を進める必要があるため、専門医による適切な判断が重要です。
6本以上の先天欠如歯
永久歯が生まれつき6本以上ない場合にも保険適用となります。2〜3本の先天欠如は比較的見られますが、6本以上は非常にまれです。欠如歯が多い場合には、矯正治療とあわせてインプラントや義歯などの補綴治療との連携が必要になることもあります。
厚生労働大臣が定めた疾患
ゴールデンハー症候群・ダウン症候群・ヌーナン症候群・ターナー症候群など、厚生労働大臣が定めた指定疾患をお持ちの方は、矯正治療が保険適用となります。対象となる疾患の一覧は公式サイトや担当医にご確認ください。
ただし、条件を満たしていても、どこの医療機関でも保険適用で治療を受けられるわけではありません。「歯科矯正診断料算定の指定機関」での治療が条件となっており、矯正歯科医の診断に基づき治療が行われると、治療費は3割負担となります。
2-2.成人の矯正治療で保険が適用されるケース
成人の場合、上記の条件に加えて、顎の位置や噛み合わせに深刻な問題がある「顎変形症」のケースで保険適用となることがあります。
顎変形症で外科手術を伴う矯正治療が必要な場合
上下の顎の大きさや位置が正常範囲から大きくずれ、噛み合わせや咀嚼機能に支障がある場合、外科矯正(外科的矯正治療)が必要とされます。この場合、外科手術も矯正治療も保険が適用され、自己負担額は3割と大幅に軽減されます。
代表的な症例として、下顎が前に突出して普通の食事や会話に支障がある「下顎前突(受け口)」、上顎が前に出すぎている「上顎前突」、上下の顎の大きさのバランスが大きく乱れている「顎の非対称」などが挙げられます。
外科矯正では、術前矯正(手術前に歯を動かして準備する期間)→外科手術(入院)→術後矯正(仕上げの矯正)という流れで治療が進みます。術前・術後を合わせると治療期間は2〜4年程度になることが多く、長期的なコミットメントが必要ですが、機能的・審美的に大きな改善が期待できる治療です。
成人の矯正治療で保険が適用される条件は子供のケースと比べて限られますが、顎変形症の方は積極的に専門医への相談をおすすめします。
3.保険適用の矯正治療を受けることができる医療機関
保険適用の矯正治療は、条件を満たす症例であっても、どこの医療機関でも受けられるわけではありません。指定を受けた医療機関での治療が前提条件となります。
- 先天疾患などの矯正治療 → 歯科矯正診断施設の指定機関
- 顎変形症の外科矯正 → 顎口腔機能診断施設の指定機関
これらは国が認定した施設であり、大学病院や一部の総合病院、特定の矯正歯科専門医院などが該当します。インターネットで「歯科矯正診断施設 指定機関 岡山」などと検索すると一覧を確認できます。
患者さん自身が「保険適用だろう」と判断しても、矯正歯科医の診断が必要です。先天疾患をお持ちの場合は、かかりつけ医に診断書・紹介状を書いてもらうことも重要なステップです。見た目だけで判断せず、必ず専門医の診断を経てから手続きを進めてください。
高額療養費制度の活用
外科矯正を受ける場合、手術・入院で1か月の医療費が高額になります。高額療養費制度を利用すると、1か月の自己負担が一定額を超えた分が払い戻される仕組みです。所得によって上限額が異なりますが、一般的な所得の方であれば1か月の自己負担上限はおよそ8〜9万円程度に抑えられます。
申請には領収書・診断書・治療内容の詳細書類が必要です。加入している健康保険組合または市区町村の国民健康保険窓口で手続きができます。複数回の入院や治療が続く場合も1か月ごとに申請できますので、忘れずに活用してください。
4.保険が使えない場合でも費用を抑える方法:医療費控除の活用
保険適用の条件に該当しない場合でも、自由診療の矯正治療で支払った費用は「医療費控除」の対象となります。うまく活用することで、治療費の一部を取り戻すことができます。
医療費控除とは?
医療費控除は、1年間(1月〜12月)に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合に、確定申告を通じて所得税の一部が還付される制度です。矯正治療の費用が高額になりやすい年に活用することで、数万〜十数万円の還付が受けられる場合があります。
矯正治療が医療費控除の対象となるかどうかは、「歯列矯正が医療上必要かどうか」によって判断されます。咀嚼機能の改善や噛み合わせの治療を目的としている場合は対象となることがほとんどです。一方、純粋に審美目的(見た目をきれいにしたいだけ)の場合は対象外となる可能性があります。迷った場合は、担当の矯正歯科医に確認してみてください。
医療費控除の申請方法
医療費控除を申請するためには、確定申告が必要です。会社員の方でも申告できます。
申請の手順は以下の通りです:
まず、矯正治療の領収書を1年分まとめて保管してください。家族分もまとめて申告できるため、配偶者やお子さんの医療費も合算できます。次に、国税庁の確定申告書等作成コーナー(e-Tax)から申告書を作成し、医療費の明細を入力します。その後、2月16日〜3月15日の確定申告期間中に申告を行います(還付申告は年間を通じていつでも申請可能)。
還付額の目安は「(医療費 − 10万円)× 所得税率」です。たとえば、年間の医療費が100万円で所得税率が10%の場合、(100万 − 10万)× 10% = 9万円程度の還付が受けられます。矯正治療で100万円を超えることは珍しくないため、ぜひ活用してください。
なお、保険適用の矯正治療を受けた場合の自己負担分(3割)も医療費控除の対象となりますので、保険適用と医療費控除の併用も可能です。
5.保険適用の矯正治療についてよくある質問
Q1. マウスピース型矯正装置(アライナー矯正)は保険が適用されますか?
A. 現在の制度ではマウスピース型矯正装置は保険適用外です。保険適用の矯正治療では使用できる装置が定められており、透明なマウスピースはその対象に含まれていません。審美性を重視する場合は自由診療でのご検討をおすすめします。なお、一部の患者さんから「インビザラインは保険が使えますか?」というご質問をいただきますが、同様に保険対象外となります。
Q2. 子供の矯正治療の費用はいくらくらいですか?
A. 自由診療の場合、一期・二期を合わせると50万〜100万円が目安です。保険適用の条件(先天疾患など)を満たす場合は3割負担となり、15万〜30万円程度で治療を受けられるケースもあります。詳しくは担当医にご相談ください。
Q3. 矯正治療が保険適用になるか、誰に相談すればいいですか?
A. まずは矯正歯科専門医に相談するのがベストです。症状によって保険適用の可能性を判断してもらえます。特に顎変形症が疑われる場合には、口腔外科との連携も必要になります。インターネットや知恵袋の情報は参考程度にとどめ、最終的な判断は必ず専門医の診断に基づいてください。
Q4. 大人(成人)でも保険が適用されますか?
A. 条件を満たせば適用されます。特に顎変形症で外科矯正が必要なケースは、成人でも保険適用の代表的な症例です。「受け口がひどい」「顎の左右がずれている」「嚙み合わせが極端に悪い」といった悩みをお持ちの成人の方は、ぜひ一度専門医に相談してみてください。
Q5. 保険適用の矯正治療と医療費控除は、どちらが有利ですか?
A. 保険が適用される場合は3割負担となるため、費用の削減効果は大きいです。一方、自由診療で受ける場合は医療費控除(確定申告)を利用することで費用の一部が還付されます。どちらが有利かは年収や治療費によって異なりますので、税理士や医療機関の窓口に相談することをおすすめします。なお、保険適用の治療でも支払った医療費は医療費控除の対象となりますので、併用することも可能です。
Q6. 保険適用の矯正治療ではどんな装置を使いますか?
A. 保険適用の矯正治療では、表側のブラケットが使用されます。マウスピース型は保険外となります。装置は目立ちやすくなりますが、矯正力は十分ですので、機能改善を最優先にお考えの方には有効な選択肢です。
Q7. 岡山で保険適用の矯正治療は受けられますか?
A. 岡山矯正歯科では保険適用の矯正治療は行っておりません。
6.まとめ:保険適用を上手に活用して矯正治療を進めよう
矯正治療は通常、自由診療として全額自己負担ですが、特定の条件を満たす場合には保険が適用されます。
2026年時点では、以下のケースが主な対象です。
- 唇顎口蓋裂などの先天疾患
- 3本以上の萌出不全・6本以上の先天欠如歯
- 厚生労働大臣が定めた疾患(ゴールデンハー症候群・ダウン症候群など)
- 顎変形症で外科手術を伴う矯正治療(外科矯正)
保険適用の場合は3割負担となり、外科矯正では高額療養費制度も利用できます。
ただし、受診できる医療機関は指定機関に限られるため、まずは矯正歯科専門医に相談して保険適用の可能性を確認することが大切です。
費用面の不安を抱えたまま治療を諦めてしまう方は少なくありませんが、条件を満たす場合は制度を上手に活用することで、費用の負担を大幅に抑えられる可能性があります。
「もしかしたら該当するかもしれない」と感じた場合は、ぜひ一度専門医にご相談ください。
情報を集めることには費用がかかりませんので、まず相談してから治療の是非を判断することをおすすめします。
また、保険が適用されない場合でも、医療費控除の活用や、自由診療の中で装置や期間を工夫することで、負担を抑える方法があります。
費用の問題だけで治療の選択肢を狭めてしまわず、まずは情報を集めてから判断していただければと思います。
矯正治療は、見た目だけでなく、噛む機能・発音・顎関節への負担など、お口全体の健康に関わる大切な治療です。
「自分には関係ない」と思っていた制度が実は使えるケースもありますので、ぜひ一度、専門医に現在の状態を確認してもらってください。
当院では「まだ治療するかどうか迷っている」という段階からのご相談も歓迎しています。
保険適用のご相談だけでなく、費用や期間に関する疑問も含めて、丁寧にお答えしますので、どうぞお気軽にお越しください。
岡山矯正歯科では、矯正治療に関するカウンセリングを随時受け付けています。
保険適用の可能性がある方、費用についてご相談されたい方も、どうぞお気軽にお問い合わせください。
まずは現状を一緒に確認するところから始めましょう。
どんな小さな疑問でも構いません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆さんのお口の健康を心よりお祈りしています。

